境界 ボーダー
ずっと隣にあった情欲の焔――
捜査一課の美形ペア、単独行動が多く問題児の松本と優秀な渡辺。松本の首は、十年来の親友でもある渡辺のフォローのおかげで繋がっている。が、松本が殺人事件の容疑者から話を聞き出すため、一緒に酒を飲んだあげくホテルで目覚めたことを知った渡辺の態度が豹変する。「お前が他の男に抱かれるのを黙って見ているわけにはいかない」そう松本を宿直室のベッドに押さえつける親友の目には、初めて見る光――情欲の焔がともっていた…。
「どうなんだよ。やったのか? あいつと寝たのかよ」
「……っ……寝てない……っ……なんで……っ……なんで俺が……っ」
容赦なく睾丸を握りしめてくる渡辺の問いに、苦痛に呻きながらも松本は首を横に振る。
「誘われたから寝たんだろう?」
「ひっ」
さらに強い力で握られ、激痛に悲鳴を上げた松本は、たまらず大声で叫んでいた。
「渡辺、お前、何考えてるんだよっ」
「…………」
次の瞬間、背に感じていた渡辺の体重が失せ、松本は彼が身体を起こしたことを悟った。同時に自分の前後に苦痛を与えていた彼の手が去っていったことも悟る。
「渡辺、お前……」
じんとした痛みを前に、違和感を後ろに覚えつつ、松本は背後に立つ渡辺を振り返ろうとしたのだが、そのとき信じられない音が松本の耳に響いてきた。
ジジ、というファスナーを下ろす音――まさか、とぎょっとし、振り返ろうとした肩のあたりを強引に宿直用の汚いシーツの上に押しつけられ、起き上がることを制される。
「おい、渡辺!」
あっという間に退いていったその手が、またも松本の双丘を掴み、両手でそこを押し広げられる。
「よせっ」
露わにされた後孔に、ぬるりとした熱い固まりが押し当てられてきたのに、松本はあり得ない、と殆どパニックに陥りなんとか逃れようとして身体を起こしかけた。
「痛っ」
だが彼が身を起こすよりも早く、渡辺は強引に腰を進め、狭道に猛る雄を無理やりねじ込んできた。身体を引き裂かれるような激しい痛みに、松本の口から堪えきれない悲鳴が漏れる。
「痛いっ……! 渡辺っ! ……っ……痛いっ!」
一気に奥まで貫いたあと、渡辺は勢いよく腰を動かし始めた。パンパンと互いの下肢がぶつかり合う高い音の合間に、松本の悲鳴が響く。
「渡辺っ! ……おいっ! ……っ……やめてくれっ……」
今や松本の顔は、生理的な涙やら涎やらでぐちゃぐちゃに濡れていた。
- プラチナ文庫
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