欲望の犬
書籍紹介
無理やり注ぎ込まれる愉悦は、甘い毒だ。
地方検事の水上は、雨の中拾ってきた哲哉と獣じみたセックスをしてしまい、そのまま家に居着かれてしまう。愛されていると錯覚するほど水上を欲しがって抱くくせに、いくら躰を繋げても哲哉は素性を明かそうとしなくて、水上は自分だけが振り回されている気がしてならない。以前会ったことがあると仄めかされても、詳しくなるのは躰のことばかり。偶然哲哉が人気上昇中のモデルだとわかり、水上は行きずりの関係を思い知らされて――。
立ち読み
ドアが閉まるのと同時に、降りてくる静寂。
「危なかったな」
大貫は声を殺してそう言い、触れるだけのキスをした。そして戯れるように唇を重ね、少しずつ濃厚に貪り始める。
「……んっ、ぅん、……ふ、……んぁ」
同僚に見つかるかもしれないという危険な目にあったばかりだというのに、水上は乱暴になっていくそれに酔わされていた。戯れに耳朶を噛んでみせる大貫に、すべて支配される。
水上は、再びあのドーベルマンのことを思い出していた。
あの犬が怖かったわけを……。
真っ黒の躰とだらりと垂らされたピンク色の舌、引き締まった躰はまるで悪魔の使いのようだった。ハッ、ハッ、と荒い息づかいで襲いかかってくるのが、恐ろしかったのだ。
いつか頭からがぶりと食べられるのではと、思っていた。
耳元で聞かされる大貫の荒い息は、あの時と同じ恐怖を起こさせる。
だが同時に、この獰猛な息遣いに酩酊してもいるのだ。
このまま喉笛に噛みつかれ、息の根をとめられてもいい――そんな被虐的な気持ちが湧き上がり、ますます息があがる。
「危なかったな」
大貫は声を殺してそう言い、触れるだけのキスをした。そして戯れるように唇を重ね、少しずつ濃厚に貪り始める。
「……んっ、ぅん、……ふ、……んぁ」
同僚に見つかるかもしれないという危険な目にあったばかりだというのに、水上は乱暴になっていくそれに酔わされていた。戯れに耳朶を噛んでみせる大貫に、すべて支配される。
水上は、再びあのドーベルマンのことを思い出していた。
あの犬が怖かったわけを……。
真っ黒の躰とだらりと垂らされたピンク色の舌、引き締まった躰はまるで悪魔の使いのようだった。ハッ、ハッ、と荒い息づかいで襲いかかってくるのが、恐ろしかったのだ。
いつか頭からがぶりと食べられるのではと、思っていた。
耳元で聞かされる大貫の荒い息は、あの時と同じ恐怖を起こさせる。
だが同時に、この獰猛な息遣いに酩酊してもいるのだ。
このまま喉笛に噛みつかれ、息の根をとめられてもいい――そんな被虐的な気持ちが湧き上がり、ますます息があがる。
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