ささやきのエクスタシー
書籍紹介
俺がいなくなっても忘れるなよ
恋人の章司が行方不明になって六年、大学生の河坂直基は章司の生存を信じていた。あるとき人気ボーカル・月城一哉のコンサートでバイトをすることになった。歳も顔も違うのに、月城の声や体型は章司とそっくりだ。打ち上げで酔った直基は月城のマンションでキスされてしまった。無理強いはされないが「好きになった」とささやかれ…。章司と同じ声の月城のことを拒むことができなくて、直基の心は振り子のように揺れ動く。
立ち読み
「月城さんのあの弾き語りのバラード、もう一回ナマで聞きたいなあ。すごくよかったですよ」
月城はふっと笑った。
「声がいとこに似てるからか?」
「それもあるけど……。いい歌だった」
思い出しただけで涙が出そうになる。声が似てることもあって、まるで章司がオレに向けて歌っているような内容の歌詞だったから。
「月城さんがコンサートやるときは、オレを呼んでくださいよ。またお手伝いしたいです。あ、今度は客として行くのもいいなあ」
そうしたら、思う存分、歌が堪能できるし、いいかもしれない。ああ、そうだ。CDも買いにいこう。オレ、あの歌がずっと好きだったけど、まだ買ってなかったんだ。
でも、ナマで聞いたら、感動したから……。
不意に、月城が低い声で歌いだした。
一瞬ビックリしたけど、それはオレが好きな曲だった。
オレがナマでもう一回聴きたいって言ったから……なのかな。考えようによっては、おねだりしたみたいだ。そんなつもりじゃなかったんだけど、そこまでしてくれるなんてすごく嬉しい。
こんなに近くでこの歌を聴けるなんて、思わなかった。近くっていうか、オレの身体は月城さんの身体に寄りかかっていたから、声帯の震えがそのまま振動してオレの身体に伝わってくる。
すごい……。
オレの頭の中に六年前のことが甦る。
オレは章司といつもこんなふうに身体をくっつけていた。子供の頃は無防備に……
そして、意識し合う仲になり、キスをして、抱き合って……。
オレはまた涙を流していた。
月城はふっと笑った。
「声がいとこに似てるからか?」
「それもあるけど……。いい歌だった」
思い出しただけで涙が出そうになる。声が似てることもあって、まるで章司がオレに向けて歌っているような内容の歌詞だったから。
「月城さんがコンサートやるときは、オレを呼んでくださいよ。またお手伝いしたいです。あ、今度は客として行くのもいいなあ」
そうしたら、思う存分、歌が堪能できるし、いいかもしれない。ああ、そうだ。CDも買いにいこう。オレ、あの歌がずっと好きだったけど、まだ買ってなかったんだ。
でも、ナマで聞いたら、感動したから……。
不意に、月城が低い声で歌いだした。
一瞬ビックリしたけど、それはオレが好きな曲だった。
オレがナマでもう一回聴きたいって言ったから……なのかな。考えようによっては、おねだりしたみたいだ。そんなつもりじゃなかったんだけど、そこまでしてくれるなんてすごく嬉しい。
こんなに近くでこの歌を聴けるなんて、思わなかった。近くっていうか、オレの身体は月城さんの身体に寄りかかっていたから、声帯の震えがそのまま振動してオレの身体に伝わってくる。
すごい……。
オレの頭の中に六年前のことが甦る。
オレは章司といつもこんなふうに身体をくっつけていた。子供の頃は無防備に……
そして、意識し合う仲になり、キスをして、抱き合って……。
オレはまた涙を流していた。
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