熱い吐息の挑発
書籍紹介
恋愛なんて、もうできなくてもいい
別れた恋人とうりふたつの顔をした上司・伊織は冷ややかな鉄面皮の男だった。なぜか日向にだけ特別辛辣で容赦がない。伊織の鼻を明かそうと躍起になる日向だが。
立ち読み
「なかなかいい性格をしているようだな、今度の新人は」
言葉とともに椅子から立ち上がった榊は、挑戦的に自分を睨みつけている日向に不敵な笑いを浮かべて見せた。
その瞬間。
「………!」
頭に昇りきっていた血が、一斉にざっと足の先まで引いていくのが判る。
咄嗟に口元を掌で覆ったのは正解で、叫びださないだけましな状況だった。
「俺が、この特別企画室室長の榊伊織だ。あと、女子社員が一人いるが、今はちょうど席を外している。机はそこの隅のやつを片付けて使ってくれ。後、何か質問はあるか?」
榊は、淡々とそれまでわざと省略していたらしい説明をし始める。
ようやくまともな対応をしてもらっているというのに、日向は茫然自失の状態に陥っていて、恐ろしい形相で榊の顔を凝視しているだけだった。
「俺の顔に何かついてるか?」
怪訝な声を出されて、日向はぎこちなく首を横に振る。
ついているも何も、その顔自体が問題なんだよ。日向は心の中で毒突きながら、指示された自分の机へと退いていた。
それでも、どうしても瞳は縫いとられたように榊を映したまま動かない。
嫌味なくらい、均整のとれた身体つきに整った容貌。
髪型などの多少の違いは見受けられたが、そこにいたのは三ヵ月前まで日向の恋人だった男だった。
いや、正確に言えば、恋人だった男と瓜二つの顔をした男だ。
言葉とともに椅子から立ち上がった榊は、挑戦的に自分を睨みつけている日向に不敵な笑いを浮かべて見せた。
その瞬間。
「………!」
頭に昇りきっていた血が、一斉にざっと足の先まで引いていくのが判る。
咄嗟に口元を掌で覆ったのは正解で、叫びださないだけましな状況だった。
「俺が、この特別企画室室長の榊伊織だ。あと、女子社員が一人いるが、今はちょうど席を外している。机はそこの隅のやつを片付けて使ってくれ。後、何か質問はあるか?」
榊は、淡々とそれまでわざと省略していたらしい説明をし始める。
ようやくまともな対応をしてもらっているというのに、日向は茫然自失の状態に陥っていて、恐ろしい形相で榊の顔を凝視しているだけだった。
「俺の顔に何かついてるか?」
怪訝な声を出されて、日向はぎこちなく首を横に振る。
ついているも何も、その顔自体が問題なんだよ。日向は心の中で毒突きながら、指示された自分の机へと退いていた。
それでも、どうしても瞳は縫いとられたように榊を映したまま動かない。
嫌味なくらい、均整のとれた身体つきに整った容貌。
髪型などの多少の違いは見受けられたが、そこにいたのは三ヵ月前まで日向の恋人だった男だった。
いや、正確に言えば、恋人だった男と瓜二つの顔をした男だ。
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