薔薇の名前 III
薔薇の楔
前編
書籍紹介
今すぐ、ここへ来い。来て、抱きしめろ
ますます深まる薔薇の謎に瀬名と彬の関係も……? 人気のシリーズ第3弾、ついに登場!
立ち読み
瀬名は彬を左腕に抱いたまま、右肘を立ててじっと彬の顔を見ていた。いつも綺麗にセットされている前髪が、バサバサに乱れて額にかかっている。前髪を上げているより、そうしているほうが少しだけ優しげに見えるなと彬は思った。
彬は手を伸ばし、瀬名の髪に触れた。もっと髪を乱してやろうと、くしゃくしゃに撫でた。
瀬名はされるままになりながら、かすかに首を傾けた。柔らかいキスが、彬の唇に触れた。
やがて起き上がると、瀬名は彬に背中を向け、ベッドから降りた。彬はその背中に、くっきりと赤い爪痕がついているのを見た。朝日の下で見るそれは、昨夜見た時よりもよほどひどく目に映った。一晩経っているというのに、まだ鮮血が滲んでいる。
構わず瀬名は、ワイシャツを着ようとする。彬が背後からそれを制した。
「待てよ」
彬は手を伸ばし、瀬名の髪に触れた。もっと髪を乱してやろうと、くしゃくしゃに撫でた。
瀬名はされるままになりながら、かすかに首を傾けた。柔らかいキスが、彬の唇に触れた。
やがて起き上がると、瀬名は彬に背中を向け、ベッドから降りた。彬はその背中に、くっきりと赤い爪痕がついているのを見た。朝日の下で見るそれは、昨夜見た時よりもよほどひどく目に映った。一晩経っているというのに、まだ鮮血が滲んでいる。
構わず瀬名は、ワイシャツを着ようとする。彬が背後からそれを制した。
「待てよ」
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