水に映る月

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本価格:586(税込)

  • 本販売日:
    1998/07/25
    ISBN:
    978-4-8296-5137-7
書籍紹介

手が届きそうで、届かない。そんな貴方だから好きになったんです。

由緒ある日舞の流派、藤浪流の師範である紫洋は、3歳年上の兄弟子・紫裕に片想いをしているが、紫裕にはすでに恋人がいるらしく……!?
立ち読み
「そうしたら、キス、です。キスは……この間も、ね?」
  すでに経験済みだから。
「でも、そっと。……ゆっくりでいいから」
  薄くて小さめな唇の位置を確かめながら、紫洋はゆっくりと唇を合わせた。
  弾力があって、やわらかくて……そして、甘い。
  途中から紫裕の腕が紫洋の首に回された。
  くちづけが少しずつ深くなっていく。舌先が触れ合ったとき、チリリと背筋に電流が走った。
「紫裕さん…っ」
「……いいですよ。次は?  ……なにをしたいの?」
  もつれる舌で、ことばにならない。紫洋は体をずらすと唇を、紫洋のあごから首筋へと移していった。
  紫裕の匂いがした。甘くて痺れるような、むしゃぶりつきたくなるような、不思議な匂いだ。
  ドキドキドキ……。
  いまさらながら、速くなっている鼓動を自覚して、紫洋は、自分が興奮しているのだとわかった。
「……見たい。紫裕さんを全部……見てもいい…ですか…?」
  確かにうなずいてくれたのを確認してから、紫洋は紫裕の寝巻代わりの浴衣の腰紐に手をかけた。
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