5年3カ月の天使
書籍紹介
「すっ、好きです!」溜め息のつき始めは、教室中に響きわたるその一声……。
しっかり者の鳩ヶ谷は同じ学年の尾関に告白され、泣き落とされて「お友達」に。子犬のように追ってくる尾関にほだされて次第に愛着を覚える鳩ヶ谷だったが……。
立ち読み
「さっきの手紙の相手は……」
鳩ヶ谷は朝から何回も聞かされた言葉に一瞬にしてカッとし、心底から腹が立ってしまった。
今まで部員とにこやかにやり取りをしていた顔が、一気にその表情を失う。いっそ見事なまでに無表情な顔は、なまじ怒っているよりもよほど怖かった。
「は、鳩ヶ谷……?」
不安そうな尾関の声にも応えはなく、鳩ヶ谷は無表情のままで手に持ったビーフシチューの入った皿を尾関に投げつけようとする。
だがしかし、その一瞬鳩ヶ谷はふと冷静に返り、己の手に持った皿を見た。出来たばかりのそれは、まだかなり熱く、これをぶっかけるとなれば尾関はそれ相応の火傷を負うことになる。
それもさすがにかわいそうかと考え直し、手近にあった生ゴミのバケツに尾関を突っ込むことにした。
呆然としている尾関の襟首を掴み、そのままバケツの中に叩き込む。頭が働いてないせいか、なすがままの尾関を動かすのはそれほど難しいことではなかった。
シーンと静まり返った室内で、部員の視線がすべて一点に集中している。その中には小出の姿もあって、制止しようと上げた手が虚しく固まっていた。
その中心にいた鳩ヶ谷は、バケツの中でもがく尾関を引き摺り出して言った。
「少しは頭、冷えた?」
鳩ヶ谷は朝から何回も聞かされた言葉に一瞬にしてカッとし、心底から腹が立ってしまった。
今まで部員とにこやかにやり取りをしていた顔が、一気にその表情を失う。いっそ見事なまでに無表情な顔は、なまじ怒っているよりもよほど怖かった。
「は、鳩ヶ谷……?」
不安そうな尾関の声にも応えはなく、鳩ヶ谷は無表情のままで手に持ったビーフシチューの入った皿を尾関に投げつけようとする。
だがしかし、その一瞬鳩ヶ谷はふと冷静に返り、己の手に持った皿を見た。出来たばかりのそれは、まだかなり熱く、これをぶっかけるとなれば尾関はそれ相応の火傷を負うことになる。
それもさすがにかわいそうかと考え直し、手近にあった生ゴミのバケツに尾関を突っ込むことにした。
呆然としている尾関の襟首を掴み、そのままバケツの中に叩き込む。頭が働いてないせいか、なすがままの尾関を動かすのはそれほど難しいことではなかった。
シーンと静まり返った室内で、部員の視線がすべて一点に集中している。その中には小出の姿もあって、制止しようと上げた手が虚しく固まっていた。
その中心にいた鳩ヶ谷は、バケツの中でもがく尾関を引き摺り出して言った。
「少しは頭、冷えた?」
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