偽装 -オメガバース-

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- 本販売日:
- 2019/05/10
- 電子書籍販売日:
- 2019/06/07
- ISBN:
- 978-4-8296-2665-8
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秘密は守るから──
おとなしく可愛がられて。
アルファ限定の医大に進学し寮長を務める冬羽は、実はオメガだった。
その秘密を理事長の息子である四季島に知られてしまい、
発情期のフェロモンにあてられた彼に抱かれた。
「秘密は守る。助けてやれるのは俺だけだ」
つがいになることは拒否できたが、優しく触れてくる手は拒めなかった。
オメガであることを隠そうとして、入学してからずっと心安らげずにいた冬羽は──。
「すごく狭かったのに、……広がるもんだな。……っすごく濡れてて、……気持ちいい」
慣れた様子で腰を繰り込みながら、四季島が胸元に手を伸ばした。
そこで尖っている乳首をくりくりと転がされると、その甘ったるい刺激が中の粘膜にも響いた。単独でいじられているときの何倍にも、快感が増幅される。きゅっと締まる襞をこじ開けながら抜き差しを繰り返されると、そのあまりの甘さに気が遠くなる。
「ッン、……ぁ、……んぁ、あ……っ」
こんなふうにされて、悦楽を覚える自分の身体が悔しくもあった。こんなふうにアルファを受け入れたくはないのに、ぞくぞくと疼く身体が貪欲に快感を求めてしまう。
だんだんと深くまで四季島のものが入ってくるようになると、奥のほうのぞくっとする部分まで刺激された。そこをかすめられるたびに頭が真っ白になって、腰がびくんと跳ね上がる。
初心者の冬羽にとって、その刺激は強すぎた。だからこそ、四季島の切っ先がそこまで届かないように、途中から腰を浮かして逃げようとしていた。だが、四季島がそれに気づかないはずがない。
「どうした? 深いの、怖い?」
そんなふうに言いながら、逃げていた場所をまともにえぐりあげられ、痛みにも似た鋭い快感が駆け抜けた。
「っん! ぁあああ……っ」
びくんと身体が跳ね上がった拍子に、つまみあげられていた乳首からも、痛いぐらいの刺激が広がる。
しかも、その突きは一度きりでは終わらない。
自分の身体の奥深くに、そんなポイントが隠れているとは思わなかった。また深くまでえぐられて、強すぎる刺激に悲鳴に似た声を漏らすと、四季島はやんわりと抜き取ってから、またそこを狙って腰を繰り出してくる。
「っん! ……っは、……は、……は、は……っ」
深くまでガツガツと貫かれるたびに、乳首からも広がる悦楽に、上体をのけぞらせるのが止められなくなる。
口が開きっぱなしになったときに、つまんでいた乳首を痛いぐらいにつねられた。強烈に走った悦楽が薄れていくタイミングを待ってまた貫かれ、冬羽にはあらがうすべはない。
しかも悦楽をつむぐ四季島の動きは、だんだんと速くなっていく。
「っん、あ、……っ、あ……んっ、……んぁ……っ」
「イっちゃう?」
乳首をつまんで、引っ張られながら尋ねられる。
きゅうきゅうと、四季島のものを締めつける中の動きが慌ただしくなったことから、四季島はそれを悟ったらしい。乳首を痛いぐらいに引っ張られているというのに、冬羽のぞくぞくは収まらない。
「ん、……イク……」
自分がひどく正直に、そのことを訴えていることへの現実感がなかった。
ただ頭を真っ白にして、悦楽を受け止めるしかない。
「っあ、……んぁ、……ひあ、あ、あ……っ」
四季島が動くたびに、冬羽もそれに合わせて腰を突き出していた。自分から動くと乳首がより引っ張られて、それすら気持ちよくてならない。つながった部分から、ぐちゅぐちゅと濡れた音が漏れた。むごいほどに深くまで突き上げられる中で、ひっきりなしに流しこまれる悦楽に酔うしかない。中をこじ開けてくる四季島の大きな硬いものを、ひたすら受け止め続ける。
「んぁ!」
だが、だんだんと速くなる四季島の動きに、冬羽の腰が逃げそうになった。乳首を引っ張られ、奥を激しく突かれる。とどめのように乳首に噛みつかれて歯を立てられ、食いちぎられそうな強烈な痛みの中で、何かが弾けた。
「ぁ、……あ、あ、あ、あ、あ、あ……っ!」
いつにない絶頂感に、ガクガクと震えながら射精する。その中で四季島のものが脈打ち、熱いものがぶちまけられた。深い部分で感じ取ったその熱さに、冬羽は屈辱だけではなく、たまらない悦楽も覚えてより高みへと押し上げられていく。
「ふ、……あっ、は、……は、は……」
だけど、何もかも押し流すほどの悦楽が薄れたときに感じたのは、首筋に刃を突きつけられたような恐怖だった。
発情期に中で出されると、妊娠するのではなかったか。だけど、つがいでなければ、孕む可能性は限りなく低いのだと思い出して、冬羽はようやく息を吐き出す。
強すぎた絶頂の反動か、身体の力は少しずつしか抜けない。ひくひくと襞が、痙攣を繰り返していた。
「っん……っ」
ゆっくりと抜かれていく。
まだ冬羽の腰や身体全体が、快感で痺れたままだ。頭がぼーっとして、何も考えられない。このまま眠ってしまいたい。まぶたがひどく重い。
だけど、そんな冬羽を現実に引き戻したのは、額や頬に柔らかく降りかかる口づけだった。その唇が自分の唇に触れそうになったとき、冬羽はようやく我に返って身体をねじった。
「……っ」
──キスは嫌だ。
全身がひどく重くて、まだ何かが入っているような違和感があった。こんなにも粘膜がじゅくじゅくするのは、そこから精液が吸収されているからだろうか。
信じられないほどの甘い悦楽の余韻に腰が抜けたようになっていたが、何より違和感を覚えていたのは、四季島がまるで悪びれていないことだった。
「どうして、……こんなこと、……したんだ」
声を出しただけで腹筋に力が入るらしく、注ぎこまれたものが少し漏れて、足の奥をさらに濡らす。その感覚がいたたまれなかったが、冬羽はあえて平静を装う。
「どうしてって?」
「こんなこと、する気はなかった」
どうしてこんなことになったのか、今でもわからない。
その言葉の意味が読み取れなかったのか、四季島が綺麗に笑った。
「発情期のオメガに手を出すのは、無罪だろ。理性では抵抗できないほどの、強烈なフェロモンを垂れ流されて、俺が抵抗できると思う? 自衛するのは、オメガの役目だ」
発情期無罪。
そんなふうに、言われていた。実際の司法の場においてそれは絶対ではなく、いろいろな状況などを鑑みて、判断が分かれるらしいが。
そんな言葉を突きつけられて、怒りと混乱に冬羽は言葉を失った。
理路整然と言い返したいのに、気持ちが乱れすぎて頭の中がぐちゃぐちゃだ。それどころか、じわりと涙があふれてきた。こんなのは自分ではない。このような姿を見られたくなくて、冬羽は腕で目元を隠した。
「二度と、……俺に、こんなことをするな」
本当は、こんなことをした四季島を司法の場に訴えてやりたい。だが、そんなことをすれば冬羽がオメガだとバレてしまう。退学になりたくないから、泣き寝入りするしかない。そんな自分の立場が悔しくて、なおも熱い涙があふれた。
「──今日のことは、……俺がオメガだって黙っててくれるのなら、不問にしてやる。だから、二度とこんな……こと……っ」
この出来事を、自分でも受け止められない。自分がアルファとセックスして、その性器を体内に受け入れたなんて早く忘れてしまいたい。
「できないな」
その切り返しに、冬羽はハッとして目元の腕を外した。四季島は先ほどのような笑みではなく、少し怒ったような顔で冬羽を見ていた。
「どういうことだよ」
「できないって言ってんの」
「ふざけるな。こっちが甘い態度に出れば、つけあがりやがって」
「そうじゃなくて! その、……なかったことには、できないってこと。これからも何か困ったことがあれば、俺を頼ってくれれば、力になる。絶対に、おまえの秘密は守るから」
──何だと?
そんな言葉が、心臓に突き刺さる。
オメガという正体を隠して入学してからというもの、ずっと心安らげずにいた。
寮でも安心できず、寮長室という一人部屋を確保してからもその緊張は解けない。
誰一人として親しい友人ができずにきたのも、冬羽が拒んできたからだ。毎日べったりとつきあうようになれば、何かに気づかれるかもしれない。
──だけど、四季島なら。
冬羽の正体を知っているこの男なら、頼れることもあるのではないだろうか。ずっと一人で寂しくて、心の内を話せる友達が欲しかった。

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