修羅の華
書籍紹介
たとえ地獄へ行こうとも、二度とこの手は離さない。
僧院で修行に励みつつも、魂の片割れとも思うカードマと戯れる日々。そんなアーシャのささやかな幸せは、養父である尊師の死と共に終わりを告げた。母を庇って父を殺害したカードマを救うため、アーシャは欲深い座主に身を任せる。ところがさらに悲惨な事件が起き、カードマは失踪。取り残されたアーシャは、座主の慰み者になっていた。だが、復讐を誓うカードマと再会し――!
立ち読み
「カードマ、わたしはもう子どもじゃないし、きれいな体でもない。それでもまだ好きだと言ってくれるの? それでもまだわたしをほしいと思ってくれる?」
そんなことを自分からたずねるのはひどく恥ずかしいことだった。けれど、ずっと寺院で生活してきたアーシャが、こんな思いを上手に告げる言葉など知っているはずもなかった。
カードマはアーシャの拙い愛の確認に笑みとともに微かな吐息を漏らす。そして、優しいけれど力強い声ではっきりと言った。
「ほしいよ。アーシャがほしい。逃亡していた六年間、一日も忘れたことはない。アーシャの白い肌、丸い飴玉のような目、赤くて小さな唇、細くてなだらかな肩の線、小枝のように華奢な指の一本一本、全部が恋しくてたまらなかったよ」
カードマの言葉にアーシャは新たな涙をこぼし、頬が冷たく濡れていく。そして、今度こそ自分からカードマの胸の中へ飛び込んでいくと、カードマの腕がしっかりとアーシャを抱き締めてくれる。
遠い昔、森の中で抱き合ったときと同じようにぴったりと体を密着させれば、ようやく自分が一人の人間に戻れたような気がした。
(そうだった。カードマはわたしの片方だ。わたしはカードマの半分だから……)
だから、二人は一つになってもいい。自分たちの魂はもともと一つだったのに、たまたま現世で二つに分かれて生まれてきてしまっただけなのだ。
「おいで、アーシャ」
子どもの頃、墓地の奥の森へ導くように、カードマはアーシャを狭いベッドへと連れていく。カードマが眠っていたシワの残るシーツの上に横たわると、アーシャは草の上で一緒に転がった日のことを思い出す。
どんなにふざけているときでも、カードマはアーシャの体に体重をかけないように気遣ってくれていた。今も変わらずアーシャの体に覆い被さってくる彼は肘や膝で自分の体重を支えている。そのくせ、唇と手のひらは吸いつくようにアーシャの顔と体を撫でていく。
そんなことを自分からたずねるのはひどく恥ずかしいことだった。けれど、ずっと寺院で生活してきたアーシャが、こんな思いを上手に告げる言葉など知っているはずもなかった。
カードマはアーシャの拙い愛の確認に笑みとともに微かな吐息を漏らす。そして、優しいけれど力強い声ではっきりと言った。
「ほしいよ。アーシャがほしい。逃亡していた六年間、一日も忘れたことはない。アーシャの白い肌、丸い飴玉のような目、赤くて小さな唇、細くてなだらかな肩の線、小枝のように華奢な指の一本一本、全部が恋しくてたまらなかったよ」
カードマの言葉にアーシャは新たな涙をこぼし、頬が冷たく濡れていく。そして、今度こそ自分からカードマの胸の中へ飛び込んでいくと、カードマの腕がしっかりとアーシャを抱き締めてくれる。
遠い昔、森の中で抱き合ったときと同じようにぴったりと体を密着させれば、ようやく自分が一人の人間に戻れたような気がした。
(そうだった。カードマはわたしの片方だ。わたしはカードマの半分だから……)
だから、二人は一つになってもいい。自分たちの魂はもともと一つだったのに、たまたま現世で二つに分かれて生まれてきてしまっただけなのだ。
「おいで、アーシャ」
子どもの頃、墓地の奥の森へ導くように、カードマはアーシャを狭いベッドへと連れていく。カードマが眠っていたシワの残るシーツの上に横たわると、アーシャは草の上で一緒に転がった日のことを思い出す。
どんなにふざけているときでも、カードマはアーシャの体に体重をかけないように気遣ってくれていた。今も変わらずアーシャの体に覆い被さってくる彼は肘や膝で自分の体重を支えている。そのくせ、唇と手のひらは吸いつくようにアーシャの顔と体を撫でていく。
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