働くおにいさん日誌

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本価格:649(税込)

  • 本販売日:
    2011/02/10
    電子書籍販売日:
    2012/10/19
    ISBN:
    978-4-8296-2500-2
書籍紹介

こんなに駄目カワイイ人は初めて…かも!  by 椹野道流

恋人の九条夕焼が店主を務めるフラワーショップの二階に、すっかり居着いた医師の大野木甫。九条に「甘やかす権利」をフル活用され、むずがゆいほどに甘い日々を送っていた。甫の弟でコッペパン専門店を営む遥も、甫の部下である深谷知彦と仲良く暮らしていて……。そんな四人の日常、ちょっと覗いてみませんか?  サイト連載ブログを改編+書き下ろし番外編も収録のお楽しみ本!
立ち読み
「残念ですけど、公園が駄目なら、ここでお花見をすればいいじゃありませんか」
「ここで?  桜も見られないのに、こんな狭い場所で四人集って飯を食うだけでは意味がないだろう」
  だが九条は、涼しい顔でかぶりを振った。
「いえいえ。ちゃんとお花見はできますよ。二階の茶の間に座卓を出せば、四人くらいなら押し合いへし合いにはなりませんし」
「それは……そうだが、ここの二階でどうやって花見をするというんだ?  窓からは、K医大の建物しか見えないぞ。生えているのは桜ではなく、イチョウだ」
  菜箸を置いた九条は、やはり笑顔のまま、腰に手を当てた。
「大丈夫です。大野木先生は、僕の職業をお忘れですか?」
「え……っ?」
「しばしお待ちを」
  そう言って台所から出て行った九条は、ほどなく両手に大量の桜の枝を抱えて戻ってきた。どれも、七分咲き程度に花が開いている。甫はそれを見て、目を剥いた。
「な……っ、そ、それは」
「はい、どうぞ」
「うわっ」
  九条は桜の枝をすべて甫の腕に預けると、さらりと告げた。
「桜ですよ。こんなこともあろうかと、何日か前に仕入れて、綺麗に咲くように調節していました。僕にも一応、花屋の矜恃というものがあります。僕がついていながら、あなたがお花見をし損じる……なんてことには耐えられませんから」
  甫は唖然として腕いっぱいの桜の枝を見下ろす。
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