熱傷

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本価格:649(税込)

  • 本販売日:
    2010/11/10
    電子書籍販売日:
    2012/09/21
    ISBN:
    978-4-8296-2494-4
書籍紹介

今日は彫りに来たんじゃない――抱きに来たんだ

四代目彫里を名乗る彫師の宮原環は、突然拉致され、宇和島組組長・宇和島志堂に刺青を施すことになる。強引な男に振り回され、苛立ちを募らせる環だったが、表面上は冷静さを崩さずにいた。だが仕事柄隠しているヤクザ嫌いという本音を見抜かれ、心を乱す。他の客とは何かが違う……宇和島に興味を持った環は、その「何か」を確かめようと男の誘いに乗り、抱かれてしまい――!?
立ち読み
「さっそく今日から下絵に入らしてもらいますね。イメージが固まりました」
  差し出されたネクタイを受け取った宇和島が、突然くつくつと笑い出す。
「……どないしはりました?」
  ゆるめにネクタイを締めた男は、「いや」と言って笑うことはやめなかった。
「いつもああやって彫る前に確認してるのか?」
  唐突な質問に、一瞬なんのことを言っているのかわからなかった。が、すぐに背中を測っていたことだと思い至る。
「そうですね。背中の形は一人一人違いますから。実際に見て触ってみないとわからへんのですよ」
「何度も危ない目にあっただろう」
「はい?」
  宇和島は環の腕にかけてある背広を手に取った。
「彫里みたいな美人に裸にされて触られてたら、変な気を起こす男が大勢いそうだからな。あんたが女だったら、俺も途中で我慢がきかずに押し倒してたよ」
「…………」
  冗談として言っているようだが、あまり気分のいいものではなかった。仕事と色事を結び付けられることには不快感がある。
  しかしこの苛立ちはそれとは別のところからきていたかもしれない。
  時々、女性を人間としてみていない人種がいるが、この男も無意識の発言から見るに、そうした者たちと同じ人種なのだろう。
「女やったら押し倒して好きにして、そのあとはペットにでもすると?  あいにく、女でも男でも、そう簡単に誰かに好きにされていいもんやないんですよ」
  にっこり笑って言うと、背広の前を留めていた男は、少し驚いたような表情をして、環に目を向けた。
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