てのひらの涙

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本価格:607(税込)

  • 本販売日:
    2005/08/10
    ISBN:
    978-4-8296-2294-0
書籍紹介

どうか、まだ俺を好きでいて──

格好いい“大人の男”都築と恋に落ちた、シナリオライターの成宮。「大丈夫。酷いことはしないから」甘い愛撫に翻弄され、人慣れない成宮は優しくも強引な都築に溺れた。けれども彼の部屋には、けっして開けてはいけないと言われた扉があった。ひとつ不安に思うと、つぎからつぎへと湧いてくる疑惑。不安に揺れる成宮は、初めて知った恋の痛みに怯えた。一方の都築も、成宮に言えないでいる偽りを抱えていて……。不器用な想いがすれ違う、センシティブ・ラブ。
立ち読み
「このまま、いい?」
「お風呂に…」
  いつも、時間をかけてムードを作って、俺が恥ずかしくないようにしてくれるのに、今日は違う。
「この間は一緒に眠っただけだったから。身体がつらくないならしたい。それとも、今日も徹夜明け?」
「徹夜はしたけど…」
「平気?」
  言いながら手が服の上から胸に触れる。
「…都築さん」
  彼の膝が自分の足を割って入り、股間を押す。
「どうしたの?  いつもの都築さんらしくない」
「成宮が欲しくて、堪らないんだ。他の男の目に晒すのも嫌だ」
「他の男って…」
「全部さ」
  触れていい、とは言わなかった。
  なのにいつも返事を待ってから動き出す手が、勝手に動く。
  ファスナーを開け、中に入り込み、性急に動き出す。
「や…」
  この間は違ってたよね?
  あのマンションの、都築さんのベッドの上で二人だけだったのに、身体が大切だからってただ抱き寄せて眠っただけだったよね?
  なのにどうして今日はこんなところで、返事も待たずに触れてくるの?
「都築さん…、せめてベッドで…」
  そう言うと、やっと彼は手を止めてくれた。
  けれどそれは言葉通り俺をベッドへ引っ張ってゆくためだけのもので、その上へ少し乱暴に押し倒すと、また覆いかぶさるようにして求めてきた。
  技巧のない、粗い動き。
  そんなに俺を求めてくれるのかと思うより、何かを捌かしたくてされているような気になってしまう。
「都築さん…」
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