背徳と愛のはざまで
書籍紹介
もっと憎め、そして悦楽に堕ちてこい
得体の知れない男たちに追われる大学生の智紀を助けたのは、貴族的な容貌だが鋭い眼をした男・サーシャだった。しかし彼の本当の狙いは、莫大な遺産の在処を示すという智紀の母の形見で──!? 身を隠したホテルで「悦んで男を欲しがる身体に、作り変えてやる」と、まるで憎むかのように智紀の身体を玩ぶサーシャ。深すぎる淫楽に泣きながらも、智紀はサーシャが時折り見せる暗く傷ついた瞳に囚われてしまい……? 悦楽に満ちたドラマティック・ロマンス!
立ち読み
智紀の目尻に、涙が浮かんだ。それがまた、悔しい。自分の弱さをさらに思い知らされているようで、智紀はたまらなく悔しく、惨めだった。
不意に、サーシャが智紀を抱きしめた。
「泣くな、智紀」
囁きと共に、目尻にたまった涙を吸われた。
「……やめろ」
脱力した身体をサーシャに抱きしめられたまま、智紀が小さく呟く。抵抗しても無駄なことは、わかっていた。
サーシャはなだめるように唇を滑らせ、目蓋に、頬に、口吻ける。
「いい子だ、智紀。悪かったな……泣くな」
打って変わった優しい声に、触れかたに、智紀は涙をこらえられなくなる。こんな男の前で泣きたくないのに、優しくされると、心の悲鳴を我慢できなくなる。
「大嫌いだ……。サーシャなんて……嫌いだ」
せめても、涙の浮かんだ目で、サーシャを思い切り睨む。
見上げたサーシャの青灰色の目が、ほんの一瞬だけ、痛そうに細められた。だが、それは瞬きするような一瞬で、次にサーシャを見た時には、それは皮肉気な苦笑に変わっていた。
「――嫌いでけっこうだ。もっとわたしを憎め、智紀。おまえがわたしを憎むごとに、わたしはおまえを狂わせてやる」
「……大嫌いだ」
サーシャの抱きしめる腕が、強くなる。苦しいほどに拘束され、智紀はサーシャの胸を叩き、大嫌いだと罵り続けた。
不意に、サーシャが智紀を抱きしめた。
「泣くな、智紀」
囁きと共に、目尻にたまった涙を吸われた。
「……やめろ」
脱力した身体をサーシャに抱きしめられたまま、智紀が小さく呟く。抵抗しても無駄なことは、わかっていた。
サーシャはなだめるように唇を滑らせ、目蓋に、頬に、口吻ける。
「いい子だ、智紀。悪かったな……泣くな」
打って変わった優しい声に、触れかたに、智紀は涙をこらえられなくなる。こんな男の前で泣きたくないのに、優しくされると、心の悲鳴を我慢できなくなる。
「大嫌いだ……。サーシャなんて……嫌いだ」
せめても、涙の浮かんだ目で、サーシャを思い切り睨む。
見上げたサーシャの青灰色の目が、ほんの一瞬だけ、痛そうに細められた。だが、それは瞬きするような一瞬で、次にサーシャを見た時には、それは皮肉気な苦笑に変わっていた。
「――嫌いでけっこうだ。もっとわたしを憎め、智紀。おまえがわたしを憎むごとに、わたしはおまえを狂わせてやる」
「……大嫌いだ」
サーシャの抱きしめる腕が、強くなる。苦しいほどに拘束され、智紀はサーシャの胸を叩き、大嫌いだと罵り続けた。
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