秘密の愛情スパイス
書籍紹介
借金の返済は甘いキスで……
兄がだまし取られた一千万を取り戻そうと相手の少年・夕貴を調べる和孝だが、しだいに自らも夕貴に惹かれ……?
立ち読み
「──もう、明日からこなくていいって」
クビを宣告されたことを、聞こえないぐらいの小さな声で告げた。
前のバイトもクビになったのだ。今回も、一週間でクビだ。あんなにも一生懸命なのに、なかなか皿洗いやウエイターから先に進めない夕貴が不憫だった。
「しょうがないよね。オレ、やっぱいつもドジだから……」
つぶやく夕貴の細いあごを、和孝はじっと眺めていた。
自覚があるのか、夕貴はそう言って笑おうとする。だけど、いつもの笑顔を浮かべることはできないらしい。頬が引きつり、瞬きを何度もしたあげくに、表情が不意に崩れた。
──あ、泣く……!
そんなせっぱ詰まったような予感があった。
泣かせたくない、と心臓をぎゅっとつかまれるような焦燥が走り、反射的に夕貴を引き寄せていた。
物足りなく感じられるほど、夕貴の肩は薄かった。腕の中の存在感が欲しくて、なおさら力をこめて抱きしめる。
「──……いいから」
やたらと、鼓動が早くなっていた。
「夕貴は、そのままで」
クビを宣告されたことを、聞こえないぐらいの小さな声で告げた。
前のバイトもクビになったのだ。今回も、一週間でクビだ。あんなにも一生懸命なのに、なかなか皿洗いやウエイターから先に進めない夕貴が不憫だった。
「しょうがないよね。オレ、やっぱいつもドジだから……」
つぶやく夕貴の細いあごを、和孝はじっと眺めていた。
自覚があるのか、夕貴はそう言って笑おうとする。だけど、いつもの笑顔を浮かべることはできないらしい。頬が引きつり、瞬きを何度もしたあげくに、表情が不意に崩れた。
──あ、泣く……!
そんなせっぱ詰まったような予感があった。
泣かせたくない、と心臓をぎゅっとつかまれるような焦燥が走り、反射的に夕貴を引き寄せていた。
物足りなく感じられるほど、夕貴の肩は薄かった。腕の中の存在感が欲しくて、なおさら力をこめて抱きしめる。
「──……いいから」
やたらと、鼓動が早くなっていた。
「夕貴は、そのままで」
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