九条
2019/09/02
目覚めてしばらく、心地よくまどろんだままゴロゴロしていられるのが休日の最高なポイントの一つですが、そのときに「今日で3月は終わりますね」と何の気なしに言ったら、先生が目を閉じたまま、「庭にたくさんの花を迎える月が来るな」と仰って、その表現のあまりの素敵さに絶句してしまいました。
そうですね。生えてくるというより、迎える、という心持ちは何とも素敵ですね。
原種のチューリップが咲き始めていますし、もうすぐ水仙やスノードロップも咲き始めるでしょうから、屋上の庭でまたお茶でも飲みましょうね。
二人で庭仕事をして、東屋で休憩するのは、とても楽しい……そう、家庭内ピクニックのようなものですから、最高です。
知彦
2019/09/02
僕の誕生日祝いの算段を皆さんがしてくださっていて、有り難い限りです。
大野木先生に「何が食べたいか遠慮なく正直に言え」と言われたので、猛烈に遠慮なく「お寿司」と答えました。
そうしたら、先生が時々出前を取るお寿司屋さんに予約を入れてくださったそう。
遥君は、まるで自分の誕生日のように、「回らないお寿司の舞」を踊っています。嬉しそうだ……。
僕も滅茶苦茶楽しみです! ありがとうございます。
二人で、来週末に向けて体調を万全に整えようと言い合っています。
甫
2019/09/02
じきに3月も終わるな。この時期は、家から出ると桜の花びらがどこからともなく風に乗って飛んで来たりして、実に風情がある。
ただしそれは、花粉症のコントロールがそこそこ上手くいっているから言えることなんだが。
昼に弁当の包みを取り出したら、ラップフィルムに包まれた桜餅が入っていて、口元が緩んでしまった。
デザートに食べてしまうと、午後が眠くて大変そうだ。おやつの時間にいただこうと思う。
子供のようなことを言うが、目先の楽しみがあると、仕事に張り合いが出るものだ。
九条も「僕もお三時にいただきます」とメールで言っていたから、離れてはいるが、一緒におやつを食べる気持ちになれそうだ。
遥
2019/09/02
そうそう、深谷さんの誕生日、来週だよね!
今年の誕プレ何がいい?って訊ねたら、深谷さん、枕がほしいんだって。
あー、なんかわかる!
前は枕なんてどうでもいいと思ってたけど、最近、どうもしっくりこないんだよね。
深谷さんもそうかあ。
店ももう目当てをつけてて、セミオーダーの枕を作ってくれる店なんだって。
深谷さんにはプレゼントするとして、俺も同じとこで自分の分を作ってもらおうかな。
理学療法士さんが目を付けた店なら、きっと俺にもピッタリな枕を作ってくれそうな気がする!
ちょっとワクワクしてきたな~。
遥
2019/09/02
そうそう、深谷さんの誕生日、来週だよね!
今年の誕プレ何がいい?って訊ねたら、深谷さん、枕がほしいんだって。
あー、なんかわかる!
前は枕なんてどうでもいいと思ってたけど、最近、どうもしっくりこないんだよね。
深谷さんもそうかあ。
店ももう目当てをつけてて、セミオーダーの枕を作ってくれる店なんだって。
深谷さんにはプレゼントするとして、俺も同じとこで自分の分を作ってもらおうかな。
理学療法士さんが目を付けた店なら、きっと俺にもピッタリな枕を作ってくれそうな気がする!
ちょっとワクワクしてきたな~。
九条
2019/09/02
もうすぐ深谷さんのお誕生日ですね、と夕食時に言ったら、先生に「お前はそういうことをよく覚えているな」と感心されました。
僕だって出会った人すべての誕生日を把握しているわけではありませんが、深谷さんのことは家族だと思っていますからね。当たり前じゃないですか……と申し上げたら、先生がとても嬉しそうなお顔に。
先生もそう思っていらっしゃるんですね。職場では上司と部下として節度を保ったつきあいをなさっているようですが、それでも深谷さんがいい仕事をなさったときは、とてもいい笑顔で僕にも教えてくださいます。
また、お祝いの相談をしましょうね。
まだギリギリお花見をしながら食事ができるかもしれませんし!
知彦
2019/09/02
朝、作業をしているときに、「ぎゃっ」って小さい声がしたら、だいたい遥君がちょっとした怪我をしたときだ。しかも、九割は火傷だ。
どうしても、オーブンの端っこに触っちゃうみたい。
最初はすっ飛んでいってたけど、最近は僕も慣れてきて、「よく冷やしなよ~」って声をかけるだけになってたんだけど、「今日は鼻血!」って言われて、つい噴き出して怒られちゃった。
ごめんごめん。花粉症だから、どうしても鼻粘膜がいつもより弱くなっているのかもね。
慌ててティッシュの箱を引っ掴んで駆けつけた。
ちゃんと血が止まったのを確認してから、僕は出勤。
たまにいつもと違うことが起こるとバタバタしちゃうな。業務を始める前に、深呼吸して落ちつこう。
甫
2019/09/02
明け方に救急車の音でふと目が覚めて、隣で眠る九条の顔をしばらく見ていた。
無論、部屋の中は暗いから、何もかもがハッキリ見えるわけではないのだが、それでも九条の横顔はとても綺麗だ。
こんな風に夜と朝の狭間のようなタイミングで覚醒してしまったとき、傍らに温もりを感じるというのは、何となくいいものだ。安心する、というのがいちばん正確な気持ちだろうか。
昨夜は諍いというほどではないが、あることについての見解が九条と異なっていて、そのことで話し合ったが、互いに理解できないまま床に就いた。
そのせいで魚の小骨が喉に引っかかったような感じはあるが、それとて愛おしいという気持ちにはかすり傷ほどのダメージも与えない。
安心して口論ができる、というのはなかなかないことで、それも互いに信頼があるからだろうと思いたい。
そんなことを考えていたら、九条がうっすら目を開き、俺を見て微笑んでくれた。
布団から出された手を、そっと握る。それだけで、昨夜のわだかまりが雲散霧消した。
今日もいい日になりそうだ。
遥
2019/09/02
店の前を毎朝掃除する。今朝は、何となく春の匂い。
なんか、そういうのあるよね?
ちょっと嬉しくなって、少し肌寒いけど、店のガラス戸を今日は久しぶりに半分開けておいた。
兄ちゃんは、春になると何となく気持ちが鬱々とする……って暗いこと言ってたけど、俺はワクワクするほう! 花粉症も薬でなんとかなってるし!
何しろ週末に遊びに行くときの選択肢に、アウトドアが増えるじゃん?
山でも海でも、とにかく外で何かできるのは楽しいよ。
今年は、食べきれるだけ釣る釣りがしたいな……って言ったら、深谷さんが「何それ」って不思議そうな顔をしたけど、昔、「食べきれないほど釣れたから」ってうちに魚を持ってくる親戚がいてさ。
俺も兄ちゃんも、どうして食べきれる範囲でやめないんだろうって不思議だったんだよね。その影響。
色々考え方はあるんだろうけど、俺は生き物を殺すことを遊びにはしたくないんだ。
深谷さんが「そうだね」って同意してくれてよかった。
九条
2019/09/02
アレンジメントのお届けを依頼された先が、二日連続でご不在。
まあ、そういうことは時々あります。仕方のないことですし、連絡がついて、明日の午後にお届けすることができそうなのでよかったですが、さすがに花は作り直さなくてはなりません。
そんなわけで、アレンジメントがリビングに置かれたわけですが、そういうのにすぐ気付いて褒めてくださる大野木先生が嬉しいです。
「商売としては無駄かもしれないが、お前の作品をゆっくり眺められるのは嬉しいものだ」
と言ってくださるので、無駄という気持ちがなくなりました。
せっかくのお祝いのお花ですから、気持ちをこめて作り直そうと思います。
知彦
2019/09/02
週の真ん中、この日が祝日って、わりとベストな配置だと思う。
遥君もそう感じていたらしくて、「ずっとそういうことにしたら、もっとみんな元気に働けると思うんだけどな」だって。
遥君は個人事業主だから、その気になったら水曜定休にできるじゃないか、と言ったら、「深谷さんが働いてる日に、俺が遊ぶのはやだよ」なんて、しおらしいことを言ってくれた。
僕はそれでも全然いいけど、遥君はイヤなんだって。
ちょっとわかる気がする。僕も、患者さんが立て込んでちょっと疲れたなってとき、遥君頑張ってるかな……と思うと元気が出るから。
でも今日はとにかく休み。
朝、布団で際限なくゴロゴロしながら、「何しようか」ってのんびり相談できるのが、何よりの贅沢だね!
甫
2019/09/02
帰宅したら、九条がエプロン姿でテレビに齧り付いていた。
動物の赤ちゃん特集だそうで、それを聞くなり、俺までジャケットも脱がずに九条と一緒になって画面に見入ってしまった。
動物の赤ちゃんというのは、どうしてああも可愛いんだろうな。
いやまあ、人間も動物のうちだし、遥も産まれてから幼稚園に上がるくらいまでは異常な可愛さだったが。
贔屓目じゃない。道行く人に「天使かと思った」と言われるほどだったんだ。
今はまあ、若干浮世離れした人間という程度だが、それでも深谷が「遥君が可愛くて」としょっちゅう言うので、まあ人並み以上には可愛いんだろう。
そう言ったら九条が真顔で「僕はどうですか」と問い詰めてきた。
可愛い、という形容詞は……むしろ俺が九条に使われるほうだ。不本意だが!
俺の九条に対する評価といえば……愛おしい、という言葉くらいしか思いつけないと正直に答えたら、いたく満足げにキッチンへ向かった。
どうやら正しい言葉を選択できたようだ。
遥
2019/09/02
春と秋は、パン生地のご機嫌がいちばんいい。
いつもよりふっくらまあるく発酵してくれる感じがする。
この前、同業の先輩から、自然の酵母でパンを焼く方法を習って、商売とは別に、ちょっと試してみようと思ってる。
果物が簡単ってことで、せっかくだからイチゴを潰して酵母液を作ってる。
ガラス瓶に三分の一もなかったのに、けっこうな量に増えてブクブク言ってて、ガス抜きのために蓋を開けると、苺そのものとは違う、ちょっとふくよかな香り。
あー、粉が好きそうな匂いだ。
ちょっと酸味のある、果物の匂いがするパンが焼けるんだって。楽しみだな。
九条
2019/09/02
二人で買い物に出掛けて、あまりの人出にくたびれて真っ直ぐ帰ってきてしまったので、家でお茶を飲んで一休みすることにしました。
キッチンでお茶の支度をしていたら、リビングから「あああ!」と悲鳴が聞こえたので慌てて駆けつけたところ、情けない顔で「九条、またやってしまった」と悲しいお顔の先生が。
ああ……また、パジャマの襟に縫い付けたタグを鋏で切ろうとして、パジャマまで切っておしまいに……。
ご自分で縫うと仰いましたが、半ば強引に没収しました。
失礼ながら、僕が縫ったほうが確実に仕上がりはマシなので。
代わりに、お茶の支度をバトンタッチしていただくことにしたら、とても丁寧に紅茶を入れてくださいました。
パジャマはパッと見わからないように縫えましたし、お茶は美味しいし、デパートで買ってきた苺たっぷりのタルトも最高だし、素敵な週末の午後ですねえ。
知彦
2019/09/02
いつもは金曜日に遥君と外食するんだけど、今週は水曜に回転寿司に行っちゃったから、今日は家で。
冷凍庫に残り物の冷やご飯が貯まってきたから、焼き豚を買って帰って、葱と卵でジャッとチャーハンを作った。
世間ではパラパラのチャーハンが持てはやされてるみたいだけど、僕は昔ながらの、ベチャッと……ではないけど、そんなにパラパラでもない奴が好きだ。
あとはすりごまをたくさん入れたわかめスープを作って、冷凍食品の餃子を焼いて、中華定食のできあがり!
「すげー! 店みたい!」って遥君が凄く喜んでくれて、何だかいつもより手が掛かってないんだけどなあ……って拍子抜けしつつも、確かにテンションが上がる飯だよね。
いかにも金曜日って感じ。今週も、お互いお疲れさん!
甫
2019/09/02
秘書が、花見の食事会を今年はいつにしようかと相談に来た。
そうか、もう桜のことを考えなくてはならないタイミングだな。ついこのあいだ、新年を迎えたつもりだったが……毎日が充実していると、時が過ぎるのが速いのだろうか。
帰宅して、九条に花見の話をしたら、九条の店には少し前からもう、梅にかわってヤマザクラが入荷しているそうだ。
桜が咲いたら、今年も夜桜を眺めて散歩がしたいな、と話し合いながら、夕食を摂った。
「そういえば、ここにもう春が」と言って九条が微笑むので、驚いて皿の上を見たら、なるほど、さかなへんに春と書いてサワラの味噌漬けか。
我が家には、世間より少しだけ早く春が訪れたようだ。
遥
2019/09/02
深谷さんが朝、俺の仕事を手伝ってくれながら、「今日はホワイトデーだから、回転寿司でも行こうか」って言ってくれた!
ホワイトデーと寿司には何の関係もない……なんてヤボなことは言わないよっ。行こう行こう!
でも最近ふたりして、寿司よりサイドメニューのほうが好きなんだよね。
ポテトフライとか天ぷらとかでビール飲んで、うどん食べて、ちょっとだけ寿司つまんで、デザート食べて帰ってくる感じ。
だけど、自分のペースで食べられるし、店員さんに会話をぶった切られることもないから、ゆっくりじっくり喋れる気がする。
毎日一緒なのに、なんかそういうときじゃないとできない話があるんだよね。
九条
2019/09/02
ホワイトデーのアレンジメントや花束をいくつかご注文いただき、ああそういえば明日だったと思い出しました。きっと、素敵なプレゼントに添えて、お返しをなさるのでしょうね。素敵です。
白を基調に、グリーンリーフ、淡いブルーや淡いピンク、薄いイエローの花を取り合わせ手、全体的に優しい雰囲気に整えて作ってみましたが、試しに作ってみた、白いカラーとアイビーだけのアレンジメントもきりっとしていてとてもよかったので、明日、お客様に両方お見せして、好きなほうを選んでいただこうと思います。
残ったほうは我が家に飾って、ささやかにホワイトデーを言祝ぐことにしましょうか。
知彦
2019/09/02
スポーツでも何でも、不思議とジワジワできるようになることって意外と少なくて、できないなりに毎日練習していると、あるとき突然できるようになる気がする。
今朝、これまでずっと手こずってきたコッペパンの成形が、突然ピタッと決まって、思わず「おおお!」って声が出ちゃった。
遥君も、「これなら堂々と売れるよ」って言ってくれて、凄く嬉しかったなあ……。
何でも、できなかったことができるようになるのは嬉しいね。
患者さんにそんな気持ちを少しでも味わってもらえるように、僕も仕事を頑張ろうと改めて思った。
甫
2019/09/02
九条に「やってみますか?」と言われて、玄関に生ける花にチャレンジしてみたのだが……あえなく挫折した。
やはり自由に生けているように見えて、ベースにはきちんとしたルールがあるんだな。
何も知らないでは、俺のようにセンスのない人間は、どうしてもすべての花の高さを揃えてしまったりする。
「先生らしいといえばらしいのですが、これではスペースがギチギチになって、花たちがのびやかに咲けませんね」
と苦笑いしながら、九条はパチパチと花を切り直し、花瓶を一回り丈の低いものにかえて、きれいに生けてくれた。
さりげないが、全体のバランスが取れていて、見ていて心が穏やかになる。
どうにも凹む結果だが、チャレンジ自体は楽しかった。
俺も、生け花の基本ルールくらいは九条から習ってみるかな。あるいは、仕事に役立つかもしれん。
遥
2019/09/02
あっ、ミントティーいいね! 俺も試してみよっかな。
嗅いでよし、飲んでよしだもんな。
鼻が詰まると何となく息苦しいから、喋ることもおっくうになって、夜、深谷さんとの会話が減っちゃった気がする。
こういうのよくないと思うから、早く鼻をすーっと通して、いつもみたいにいっぱいお喋りしたい。
でも、喋らなくても別に関係が切れたりはしないよ。
深谷さん、「無理して喋らなくていいからおいで」って言って、胡座の上に俺を乗っけたままで本を読んでくれたりする。
でっかいクッションになったみたいだけど、悪い気はしないんだよな~。
なんか、深谷さんの袖に鼻くっつけて、ふがふが嗅いでみたりする。くすぐったいって怒られるけど。
九条
2019/09/02
先生が花粉症で少し元気のない日々なので、今日の外食はなしにしますか?と訊いてみたのですが「いや、せっかくだから外で食べよう」と言ってくださいました。
お稽古を済ませ、いつものカフェへ行くと、熱々のミントティーの蒸気を真剣な面持ちで吸い込んでいる先生のお姿が。
なるほど、そうすると鼻も通るし、喉にも心地よさそうですね。
「飲んでも食道がスッキリするような気が」
と仰る先生が本当に気持ちよさそうなので、ミントティーの茶葉を買って帰ることにしました。
やはり花粉症にはスパイスがいいのだろうか……と二人で話し合いつつ、インド料理を食べにいくことにしました。
ベタですが、何となく身体にいいものを食べさせてもらえそうな気がしますよね。
知彦
2019/09/02
仕事から帰ったら、小さな鍋にお汁粉が入っていた。
近所のお婆ちゃんが、菱餅のお裾分けと一緒に持ってきてくれたそうだ。
こういうの、ありがたいなあ。
お年寄りの煮た豆って、何故かホントにことごとく旨いんだよね。
やっぱり、時間をかけて丁寧に煮るからなのかなあ。
お返しは蒸しパンをリクエストされたらしいから、明日の朝、栗の甘露煮を散らした蒸しパンを二人で作ることにした。
ご近所付き合いなんてこの家に越してくるまでは知らなくて、慣れないうちは何だか距離感が掴めなくてドギマギしたけど、馴染んでくると嬉しいもんだね。
無理をしなくていい関係で、さらっとかまってくれる感じがありがたい。
甫
2019/09/02
確かに花粉症は難儀だな。
薬がなかったらどうなってしまうんだろうと、毎年思う。
薬の作用のせいか寝起きがいつもよりさらに悪くて、毎朝、九条に厄介をかけてしまうんだ。
仕事の準備が忙しいのに、俺を起こす手間をかけさせて申し訳ないと思うんだが、九条は「いいえ、あなたを起こす仕事はこの上なく楽しいので構いませんよ」といつも笑い飛ばす。
今朝は、鼻が詰まっていても甘くていい匂いで目が覚めた。
開店準備が早く終わったからと、九条がキッチンでフレンチトーストを焼いてくれていた。
「甘い匂いがした」
と言ったら、「おやおや、はちみつに誘われて冬眠から覚めた熊さんのようですね」と笑われてしまった……。
確かに、子供みたいにパジャマのままでぺたぺた起きていってしまった。実に恥ずかしい。
遥
2019/09/02
目が覚めた瞬間に、あっ今日は花粉たくさん飛んでるってわかるよ……って言ったら、深谷さんに「マジで?」って驚かれちゃった。
わかるよ~!
花粉症ってホントに大変なんだねって、同情されちゃった。そうだよ!
でもまあ、早めに薬をもらって飲むようになって、だいぶ楽だけどね。
はー、でも今朝は目がくしゅくしゅするなあ。
花粉症って全身で色んな症状を起こすらしくて、「この時期のだいたいの不調は、花粉のせいだって思ってていいよ」って主治医の先生に言われた。
そういう意味では、俺はもりもり飯が食えてるだけでもまだマシかぁ。
パン生地の匂いがちょっとわかりにくいのが困っちゃうけどね。
九条
2019/09/02
おやつにひなあられをお出ししたら、先生が「男所帯でひな祭りか」と笑いながら、真っ先にチョコレートをかけた一粒を摘まんでお口へ。
いいんです。イベントごとは多いほど楽しいですし、献立に悩まずに済みますからね。
今夜は蛤のお吸い物に、菜の花のおひたしに、ちらし寿司です。
蛤と菜の花は昨日買っておきましたし、ちらし寿司は、手間こそ少しかかりますが、食材自体は意外と質素で、家にあるもので作れてしまうのですよね。
今年は土曜日のひな祭りですから、先生が一緒に台所に立ち、具材を片っ端から丹念に刻んでくださっています。
多少時間がかかっても、この緻密なお仕事ぶりは見事の一言に尽きます。
先生のお人柄をそのまま反映したちらし寿司になりそうですね。
知彦
2019/09/02
そろそろこたつとの別れを考えなきゃな……って晩飯食いながら何となく言ったら、遥君が「だめ! 絶対だめ!」って、泣きそうな顔でこたつにしがみついた。
そ、そこまで?
我ながらバカみたいだけど、何となくこたつに嫉妬してしまった。
まあ、まだ肌寒い日が続くから、4月までは置いておけばいいか……。
スイッチを入れたまま寝ちゃ絶対ダメだよ!って言ってあるけど、遥君、よく律儀に電源をオフにしてから、こたつに潜り込んでぐうぐう寝てるもんな。
ジェラシーはあるけど、その姿が凄く可愛いから、つい俺も、こたつを片付けるのが遅くなる。でも……でも、桜が咲いたら絶対に片付けるよっ!
そっからあとは、肌寒ければ僕にくっつけばいいだろ。
甫
2019/09/02
今日から3月か。
リハビリルームの受付に、小さなひな人形が今年も置かれた。
患者さんが手のリハビリで作ったものだ。千代紙の着物がとても丁寧に作られていて、部屋の雰囲気が華やぐ気がする。
そういえば家を出るときも、九条が「たくさん仕入れたんですよ」と言いながら、作業台の上に桃の枝を積み上げていた。
近くの和食レストランに納めるものだそうだ。なるほど、和食は季節を大切にするから、桃の節句も料理に生かされるんだろうな。
何だかそれが見たくなって、今夜はその店で二人で夕食をとることにした。
九条が選んだ桃の花が飾られた店内を見るのが楽しみだ。