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空はちゃんと晴れてる

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本価格:650(税抜)

電子書籍価格:--円(税抜)

  • 本販売日:
    2019/01/10
    ISBN:
    978-4-8296-2656-6
書籍紹介

幸せにできるように、俺、頑張るね。

チャラいカフェ店員の青空に反感を抱いていた国上。
でも、見かける度に彼は笑顔で人助けをしている。
ニコニコあっけらかんと「無職で穀潰しだから」と口にする青空に、
心配になった国上はついつい説教してしまう。
それからすっかり懐かれて話をすれば、外見とは裏腹に純粋で不器用、まるで迷子の子供のようだった。
人のことばかり優先して、自分に自信がない彼を放っておけず…。

立ち読み

「優しい子だな、君は」
 いつもの国上なら、『周りに合わせて自分を変えるなんて、馬鹿馬鹿しい』と一蹴していただろう。
 だが今は、そうすることができなかった。青空がいつだって、周りの人たちのために力を尽くしたいと考える、優しい青年だと気づいた今となっては。
「どこが?」
 青空にはまったく自覚がないに違いない。小さく啜りながら、怪訝そうな表情を作っている。
「キスもしたことないって?」
 答える代わりに国上は訊ねた。青空は青空のままでいいとか、ありきたりの正論を口にする気に、どうしてもなれなかったのだ。そんなことでこの青年は楽になれない。
「……どうせ、ないですよー」
 からかったつもりはないのに、青空がまた拗ねたような、少しだけ傷ついたような顔で目を伏せる。自分から離れようとする仕種を見て取り、国上は相手の腕を掴んだままの指に、少し力を籠めた。片手だけを外し、青空の顎を指で軽く上向かせる。
 不思議そうな表情に変わる青空の顔に、顔を近づけた。
 触れるだけのキスをして、すぐに離れる。
「これで、経験者」
「……」
 間近で青空が瞬いた。
「今の、キス?」
「そう。大したことじゃないだろ?」
 唇を軽くつつくように当てただけだ。青空が幼児の頃に体験したという『事故チュー』と大差ない。酔いを言い訳に勢いでキスして、万が一青空に拒絶されたら、事故チューだと言い張ろうと頭の片隅で国上は考えていた。男とのキスなんて事故だから、数に入れなくていいぞと。
 自分に対しても予防線を張っていた。
「……よくわかんなかった」
 青空は嫌がることはなく、まだ不思議そうな顔で、自分の唇に指を当てている。
「そのくらいのものなんだって、キスなんて」
「……もっかいしていい?」
 青空は指の背で自分の唇を叩いたあと、国上に訊ねてくる。
「どうぞ」
 国上に断る理由はない。大したことない、そのくらいのものだ。キスなんて。
「……」
 青空はベッドに腰掛ける国上の膝に手を触れ、そこに体重を乗せるように身を乗り出してきた。そろそろと近づいてくる相手の顔を、国上は身動ぎせずに待ち構える。
 青空を脅かしたくないという気持ちと──不意にボディタッチされて、それに若造みたいに心臓を跳ねさせたことを、気づかれたくない気持ちで。
 青空は、おそるおそるという仕種で国上の唇に唇で触れた。泣いたせいなのか青空の唇は少し湿っていた。国上と同じビールの匂いがした。
 近づいてきた時と同じくらいのろのろと離れ、国上の膝から手が離れたあと、青空ははあっと大きな溜息を漏らした。
「……全然、大したことある」
「そうか?」
「すっげぇ、ドキドキしてる……」
 青空は自分の胸の辺りを片手で押さえ、もう一度大きな息を吐き出した。
 国上は釣られて柄にもなく胸が高鳴りそうな気配を自分の中に感じて、誤魔化すために、笑った。
「これくらいのキスで怯んでたら、この先どうするんだ」
「この先……」
 呟きながら、青空が国上を見上げる。互いの体はまだ近くにある。青空は不思議そうな表情ではなく、その『先』を知りたいと眼差しで伝えてきた。少なくとも国上はそう受け取った。
「……」
 今度はまた、国上の方から近づく。青空は大人しく膝を揃えて座っている。国上は片脚をベッドに乗り上げ、青空と向かい合う恰好になって、もう一度唇を合わせた。触れただけですぐに離れようとすると、青空から追い掛けてきた。青空もまた軽く触れただけで離れようとするのを、国上が再び追う。
 何度かそんな応酬を繰り返した後、国上は青空の頬に掌を当てながら、今度はもっと強く唇を相手に押しつけた。
 舌で唇を舐めると、青空の体が小さく震えた。驚いたようだった。そのまま国上が笑いを零すと、青空からむっとしたような空気が伝わってくる。舌で唇を開くよう促したら、青空は素直にそれに従った。
 青空の唇の中に舌を潜り込ませる。青空はどうしたらいいのかわからないふうに、口中で舌を縮こまらせている。
「──舌、青空も」
 言葉で催促した国上を真似て、青空はおずおずと、自分も舌をほんの少し唇から出す。国上は遠慮せず、その舌に舌で触れた。
(──そういや、俺だって、久しぶりだった)
 仁佳と別れた後、何人かいい雰囲気になった相手はいたが、国上の忙しさと、『融通が利かない頑固さ』についていけないと、離れていった。国上だって青空に大きな顔はできない。長く続いた恋人なんて、仁佳くらいしかいなかったのだ。
「……ん……」
 青空は最初、舌も体も強張らせていたが、国上が頬を親指で撫でたり、背中を撫でたりするうち、少しずつその緊張が解けていった。
 代わりに体にどう力を入れればいいのかわからない感じに、少しずつ体が後ろに傾いでいく。積極的に舌を絡め、口中を舐める国上の勢いに押されているようでもあった。
 国上は倒れないよう青空の背を支えた。青空も、国上の腕に縋るように身を寄せてくる。
「キ……キスって……すっごい……」
 青空はほとんど国上の肩辺りに頭を預けるようにしていて、熱っぽい吐息が国上の首筋に当たる。
「口、触るだけなのに、気持ちいい……」
 青空はとろりとした眼差しで、あまりに明け透けな感想を呟いた。呼吸が乱れている。キスの間、その背や腰が小さく跳ねていた。キスだけで気分も、体も盛り上がってしまったらしい。
 それは、国上も一緒だ。何だか収まりがつかない。どこかで自分を止める自分の声が聞こえるのに、無理矢理聞こえないふりをする。
「ああ。気持ちよさそうだな?」
「んっ」
 予測したとおり、青空の腰から脚のつけ根に手を這わせると、固くなっている性器に指が当たった。青空が落ち着かない様子で視線をあちこちに彷徨わせた。目許が赤くなっている。勃起してしまったことが恥ずかしいようだ。

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