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身元引受人

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書籍紹介

僕のこの愛は、罪だ。

事故で母と妹を亡くし荒んだ生活を送る遼一は、ついに逮捕されてしまう。
その際、身元引受人として現れたのはエリート然とした男・片桐だった。
母達を殺した相手への復讐だけを願い生きてきた遼一だったが、
温かい食事に慈しむ眼差し、そんな優しさに少しずつ心が解かれていく。
だからこそ復讐への思いに区切りをつけられた。
なのに、片桐の抱える“罪”が明らかになり──。

立ち読み

「遼一くん。なにがあった? 教えてくれないか。僕は君を助けたい。そんなに震えて、どうしたんだ?」
 助けたい、穏やかな声でそう告げられて思わず、は、と短い吐息を洩らした。ほとんど無意識だった。もつれる足で振り返り、こみあげる感情のまま、ドアを閉めた片桐に震える腕を伸ばして正面からしがみつく。
 自分の咄嗟の行動が理解できない。だが、理解できない、その事実さえよくわからなくなった。服越しに触れる彼の体温に意識も感覚も一瞬で占められる。
 荒れ狂っていた頭の中が彼一色になった。ホテルの部屋で囚われた嫌悪感は、彼が相手であれば湧きあがってこなかった。
 かわりに身体へ充ちてくるのは、切実なまでの、子どもみたいな欲求だった。
 この男に助けてほしい。救ってほしい。
 片桐はなにも言わずに遼一を受け止めていた。驚きはしたのかもしれないが、そんな様子は見せなかった。あの日のように抱きしめはせず、しかし突き放しもせずにただその場に立っている。
 おそらくはいまだ混乱から抜けられていない自分の状況を見て取り、あえて手を差し出さずにいるのだろう。自分が怯えないよう、これ以上は惑わないようにだ。
 なんだか胸が苦しくなった。いままで劣情に染まったたくさんの手を伸ばされた。それでよい、こんな薄汚い身体でも欲しいというのならばそれがよいと歪んだ夢に身を任せてきた。しかし片桐はそうはしない。
 だから、その手が欲しい。
「男を抱いたことはあるか」
 問う声は勝手に、縋るような色を帯びた。片桐は遼一をしがみつかせたまま静かに答えた。
「ないよ」
「あんたのせいで今夜ひとり男を食いそこなった。あんたの顔を思い出したらなにもできなくなった。だから、あんたが責任を取ってくれ」
 抱いてくれ、という意味であることは当然伝わったはずだ。
 片桐は少しのあいだ無言だった。その沈黙にようやく若干は頭が冷め、今度は不安が足もとから這いあがってくる。
 いくらまともな状態にないからといって、男と寝たことがないという男に向かっていきなりこれはないか。助けたい救いたいと言いはしても、この男だって自分を抱きたいなんて思っていまい。
 強張る腕を解き、ぎくしゃくと身を離そうとした。そうしたら、そこで不意にぎゅっと抱きしめられた。
 腕の力強さにくらくらした。
 自分の感情のせいなのか、あるいはその行為で彼が示唆している意思のせいか。あの日、安アパートでこうされたときよりも胸に迫る抱擁であるように思えた。
 身体からゆっくりと震えが消えていく。かわりにじわりと知らない興奮が忍び寄ってくる。
「わかった。僕が責任を取ろう。誰のかわりでもなくただ僕として、君を抱こう」
 耳元に低く告げられて思わずきつく目を瞑った。離しかけていた腕で、改めて片桐に抱きつく。
 もう知っている彼の香りをふと強く感じ、ますますの目眩を覚えた。
 こんなふうに自分から誰かを求めたことなんて過去になかった。

 

 手を引かれて寝室まで連れていかれた。
 片桐がシャワーを省略したのはおそらく、切羽詰まった遼一の心情を察していたからだろう。
 その通りとにかく早く片桐の素肌に触れたかった。手を伸ばしたかったし、伸ばしてほしかった。
 自分の欲望の正体が理解できない。ただの性欲ではなく、もっとずっと切実なものだとは思う。助けてくれ、救ってくれ、しかしその願いがセックスでかなうのかはわからない。それでも彼の手が欲しい。
 身体の、あるいは心の深い場所で彼を知りたかった。そして彼にも自分を知ってほしかった。経験のないその思いは自分で自分に戸惑うほどに強く、洒落た誘惑のセリフも余裕を装う言葉も考えつきやしない。
 照明はつけたままの寝室で向かいあい、そこで片桐は優しく笑った。
「そんな顔をしないでくれ、遼一くん。僕は逃げないよ」
 揶揄の表情でも口調でもなかったが、恥ずかしさでかっと顔が熱くなった。そこまで自分は必死の形相をしているか、急いているように見えるのか、そう思えばいたたまれなくもなる。
「僕は男を抱いたことがない。だから手順を知らない。いやだったら止めてくれ」
 片桐の態度にはためらいも戸惑いもなかった。少なくとも遼一には感じ取れなかった。もったいぶる様子もなく彼の手が伸びてきて、安っぽいシャツのボタンをひとつずつ弾いていく。
 思わずごくりと喉を鳴らしてしまった。この男は本当に自分を抱くつもりだ、こんな身体でも抱いてくれるのだ。そんなことを考えたら一瞬で頭に血が上った。
 欲しい。この男が欲しい。なりふりなど構っていられない。
「いい……。自分で、脱げる」
 掠れた声でなんとか言って、すぐ目の前に立っている片桐の身体を押し距離を取った。うまく動かない手でポケットから使いきりのローションのパッケージを取り出し、枕のそばに投げる。
 今夜は身体を売るつもりで部屋を出たから用意していたものだ。あばずれだと呆れられてもいいだろう、もういまさらだ。
 片桐の表情は確認せず、おぼつかない手つきでボタンを外した。どうしてこんなに緊張するのだ。お使いくださいとローションを放り出しておきながら、さっさと服も脱げない自分が情けなくなる。
 片桐は遼一がすべて服を脱ぎ捨てるまで黙って待っていた。言葉通り彼には逃げるつもりはないようだし、もたつく遼一に興が削がれると文句を言う気もないらしい。
 全裸になってから、今度は自分から片桐に手を伸ばした。きっちり締められたままのネクタイを解こうとすると、彼はまた穏やかに笑った。
「僕も自分で脱ごう」
 あっさりと片桐が素肌をさらしたのは、意外ではあった。
 裸で向かいあった片桐は、とても美しい、しなやかな身体をしていた。清潔で汚れなどひとつもないように見える。自分とは真逆だと思い、それについ怯んだ。
「……綺麗だな」
 ほとんど無自覚に呟くと、片桐は肩をすくめて「どうだろう?」とどこか愉快そうに言った。この男ははじめて男とセックスをするというのにずいぶんと余裕だ。嫌悪も、違和感すらもないようなやわらかい表情をしている。
 彼にとってこれはいやいや従う行為ではないのだろう。あるいは自分に、いやではないよと示そうとしている。
「あんた、おれが相手で勃つのか」
「どうだろう」
 眉をひそめて訊ねたら同じ言葉で返された。それから、再度距離を詰めた彼にするりと顎を撫でられる。
 つい先ほどホテルで男にされたのと同じ仕草のはずだ。なのに、こみあげてきたものは悪心ではなく確かな興奮だった。
 間近に見つめられ視線で確認されたので、目を閉じることで答えた。間を置かず重なってきた唇にますます欲が湧く。
 優等生的な印象からきっと上品なキスをするのだろうと思っていた。しかしそうでもない、なかなか露骨なくちづけだった。すぐにぬるりと舌が入ってきて、歯の裏側だの口蓋だのを好き勝手に舐められる。

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