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満願成就 -周と西門-

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書籍紹介

俺はあんたの対だ。

憑いた怪異を引き剥がす呼児の周と、それを封じる戻児の西門。
かつて周は双子の妹が、西門は恋人が対だった。
それぞれの対を亡くし、仮の対となったふたり。
周は西門へ恋心を抱き、隣にいるために一生懸命だった。
けれど彼は、亡き恋人を忘れられないという。
そんな時に赴いた遠縁の結婚式で遭った怪異。
解決へと奔走する中で西門は過去と、そして己の気持ちと向き合い──。

立ち読み

「……だ、だってあんたのお荷物になりたくないし、もうお荷物なんだけど、だから恋とか愛とかぬるいこと言ってる場合じゃないと思って……あんたも迷惑だろうし」
「迷惑とか言うた覚えないんやけど」
「言わなくても、態度でわかる」
「人の気持ち勝手にわかったつもりになられるほうが迷惑やわ」
 じりっと頬の熱が上がった。
「迷惑っていうか……困ってると思って」
「うーん、困ってへん言うたら嘘になるけど」
「……わかってるよ。仮免って言ってたし」
「うん?」
「警察から仕事手伝ってほしいって呼ばれてるんだろう。でも対は二人一組だし、俺が半人前だから、あんたも動けないんじゃないのか。そんなの対の意味ないし、せめてあんたの足手まといになりたくないし、だから早く追いつかなきゃいけないし、そんなときに恋とか愛とか寝言言ってられないし……だから……」
 話しながら絶望した、重荷になりたくないと思って立てた計画だったのに、言葉を重ねるほど重くなっていく。西門はこれ以上なく困った顔をしている。
「仮免言うたんは、俺の中に薫ちゃんがおるからや。あの子がおまえとの力の仲介をしとるからスムーズに除霊ができる。俺の手柄やあらへん。そういう意味の仮免」
「…………あ」
 ネガティブな誤解に、じわりと顔が熱くなった。
「これやから、本気の色恋はめんどくさいねや」
 憂鬱がにじむような溜息をつかれ、完膚なきまでに傷ついた。
「言葉の端っこいじくり倒して、誤解して、なんやかやすれ違うて、こうしたほうがええやろて勝手に気い回して、そんなんしても行き着くんは最悪な事態なんや」
 初めて聞く、投げやりな口調に少し驚いた。
「六巳がおらんようになってから、俺はそういう面倒なこと言わんやつとしかつきあわんかった。飲み屋の子とか、他に彼氏おる子とか、お互い割り切っとるほうが楽やろ?」
 言葉が細い針になって心を突き刺しまくる。自分は今、おまえは面倒くさいと言われているのだ。もう消えたい。やっぱり告白などしなければよかった。
「……ごめんなさい」
 うなだれると、いやいやと肩をつかまれた。
「アホ、なんでそこで謝んねや。俺、今、かなりひどいこと言うたで?」
 ──じゃあ、俺は一体どんな態度を取ればいいんだ?
 さっぱりわからない。自分なりに考えて、告白を取り下げようと思ったのだ。しかしそれはどうも違うらしく、面倒だと言われ、そうか面倒なのかと謝ったら、アホ謝るなと言われ、では自分はどうすればいいのだ。あんたはひどいと駄々をこねればいいのか、拗ねればいいのか、泣けばいいのか。うっとうしく伸びた前髪の隙間からじとっと見ると、西門は追い詰められたようにうめいた。
「これやから、本気の色恋は嫌やねや」
 面倒くさい上に嫌と言われた。つらすぎてぐっと唇を噛みしめると、
「ああ、あ、ちゃうねや。嫌言うたんはおまえのことやのうて──」
 西門は思い直したように言葉を切った。
「……めんどくさいことになっとるんは、おまえやのうて俺や」
 西門は忌々しそうに大きく息を吐いた。
「悪い、周」
 どきりとした。ついにはっきりとお断りされるときがきたのか。
「おまえ、こういうのとことん苦手やよな。不器用いうか、今どき小学生のほうがまだましちゅうか、そんなやつが勇気出して好きや言うてくれたのに、ずるずる態度決めんかった俺が全面的に悪い。俺が不安にさせた。すまんかった。周はなんも悪うない」
 そうじゃない、そんなんじゃないと何度も小さく首を横に振った。好きになったのはこちらの勝手で、好きになられた西門にはなんの責任もない。
「……あんなあ、周」
 西門が手を伸ばしてくる。ほんのわずかに指先がふれた。
「俺はおまえの前ではちゃんとしときたかったんや。おまえがしょんぼりしとったら俺が笑かしてやりたいし、おまえがこけたら、俺が助け起こしてやりたい。そういう過保護が行きすぎて、今のこんな気持ちのまま、おまえと話すのは嫌やったんや」
 指先をほんの少し触れ合わせたまま西門は話す。
「前も言うたけど、俺はおまえがかわいい。けど正直、十年過ぎても俺の中には六巳がおる。どっこも行きよらん。こんな折り合いつかんまま、おまえになんの答えも出せへんかった。けどこのまま言葉尻捉えて、探り合うたりすんのおまえも限界やろ?」
 周はこくりとうなずいた。正直、もうヘトヘトだった。
「せやから今年いっぱい。それで踏ん切りつかんかったら、俺はここを出てく」
 弾かれたように顔を上げた。
「呼児としても、おまえが俺を必要としとんのはわかっとる。けど、おまえが恋愛と仕事を割り切れるほど大人やとは思えんし、実際つらそうやし、気持ちに応えられへんねやったら、ずるずる行く前にすぱっと離れるほうがええと思う」
 心臓が激しく波打っている。年内ということは、今が十月なのであと二ヶ月。短いと思ったけれど、告白してからなら四ヶ月。答えを出すには充分だ。
「……わかった」
 心の片隅で、西門といられるのもあと少しかと早々に諦めが生まれた。死刑宣告を受けた気分だ。一日一日ゆっくり締め上げられていく感じ。もういっそ、今日限りとすっぱり切られたほうが楽かもしれない。
「本気の色恋とか、俺はもうせんやろと思うてたけどなあ」
 西門はふうと大きく息を吐くと、周の手を取った。そのまま周を巻き込んでベッドに倒れ込んだ。頭ごと抱きしめられ、身動きできない。
「待たせて堪忍なあ」
 西門の腕の中でおとなしくしながら、堪忍、という言葉の意味を考えた。自分が勝手に好きになってしまっただけで、西門が謝る必要は欠片もない。今すぐ切られてもしかたないのに、正面から受け止めてくれた上に、年内いっぱい時間をくれた。
 じわじわと恥ずかしくなってくる。自分はさっき早々に諦めが入った。いっそすっぱり切ってしまったほうが楽なのかもと思った。自分が押しつけているほうなのに。
 ──諦めてる場合じゃない。
 ──俺ももっとがんばらないと。
 なにをどうがんばればいいのかはよくわからないけれど。

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