添い寝から始めました。
僕たち、いつかセックスするの?
放射線技師である圭太の元を、添い寝する友達の代理として訪れた玄一郎。
人付き合いだけでなく自分の感情にも不器用な圭太に興味を持ち、添い寝するだけのはずが、つい手を出してしまった。
賑やかに自由に生きている彼は、自分とは真逆の圭太をどうにも放っておけなく感じたのだ。
圭太もまた、玄一郎と過ごし温もりを知ることで、麻痺していた感情が柔らかく溢れ出てきて……。
「ありがとう、これで一応の解決となりそうだ」
「じゃ、今夜はもうぐっすり眠れますね」
「たぶんね」
自分の手を握っていた圭太の手から力が抜け、離れようとしたのを玄一郎はぎゅっと握って引き戻した。
「もっと話そうよぉ」
甘えてみた。
「悩み事、まだあります?」
「ないけどね」
「ないならもう寝ましょ」
「う…ん」
「眠くないです?」
そう尋ねながら、これは本当に思いがけないことに、圭太が玄一郎の股間に繋いだ手の甲を押し当ててきた──先日、玄一郎がしたのと同じように。
そして、身体を反転させ、もう一方の手でスエットの上からそこを握り締めてきた。
「……!」
完全に不意を突かれた玄一郎は息を飲んだ。
圭太が言い訳がましく言う。
「この前、こうしてくれたから……本当によく眠れたんです。だから…──」
「して…くれるって?」
意外なような、そうでもないような…──しかし、大胆ではある。
「自分じゃあまりしないから、どうするのが正しいやり方なのか分からないけど……同じ、ですもんね? たぶん、自分が気持ちいいことをすればいいんですよね」
「うん、圭太くんが気持ちいいことは、オレにもきっと気持ちいいはず」
「なんとかなるかな」
決して巧みとは言えない──ぎこちないばかりの動きだが、その不慣れな感じが玄一郎には堪らない刺激になった。
股間に血が集まるのを感じた。
「あぁ、堅くなってきた!」
無邪気に実況され、玄一郎は繋いでいない方の手で圭太の二の腕をむんずと掴んだ。
力任せに圭太の身体を自分の身体の上に引っ張り上げると、堅くなりかけた股間に圭太のやはり堅くなりかけたものが重なった。
「……あれ、圭太くんのも勃起しかかってるね」
指摘してやると、身を剥がそうとする。
すかさず背に腕を回して阻止だ。
下から揺すり上げると、息を飲むのが分かった。
「一緒に気持ち良くなれるよ」
「……僕はいいのに」
「一緒がいいよ。ね、少し腰を動かしてみて」
おずおずと圭太は腰を擦りつけてきた。
布越しに堅いもの同士が擦れ合い、押しつけ合い、揺すり合いして……ごりごりと硬度が増す。
息を切らして圭太が顔を上げた。
赤く染まった目元ととろりと潤んだ瞳の艶っぽさに、玄一郎はぐっと胸を掴まれたのを感じた。
圭太は男だし、自分をソイトモとしか思っていないと分かっているのに、どうしてか惹かれてしまう。
(……普段は無表情に近いのに、なんて顔をするんだろうな)
結構なキャップだ。
じっとり見てしまうと、圭太が気まずそうに顔を逸らした。
避けられたくないと思うや、玄一郎は素早く圭太の顎を捕らえ、口づけした。
男のものとは思えない柔らかい唇は積極的に受け入れた様子はなかったが、明らかに拒む素振りもしなかった。
唇を放し、圭太の表情を覗き込む。
戸惑いと困惑に瞳を揺らし、問うように小首を傾げている──いつか見た、角砂糖を洗ってしまったあらいぐまの動画を思い出した。
『どうして?』
ハテナの表情は同じである。
(男同士でキスなんてね……そうだよね、オレだってびっくりだ)
外国人の友人で特に熱烈歓迎なタイプは挨拶としてそうしてくることがあるが、それ以外には男同士が口づけをする理由はない。
どんな言い訳を口にすればいいのか……いや、言い訳すべきなのだろうか。生理的な拒否感が湧かないのが答えではないのか。
明らかな回答に行き着く間もなく、玄一郎はもう一度口づけしてみた。
「あ……!」
今度は重ねるだけでなく、もっと深く──舌を差し入れ、圭太の舌に触れてみた。
温かく湿った感触は、玄一郎を抗いがたいほどの性的な気分に導いた。ズクン…と股間が痛いくらいに突っ張った。
「ね、ど…どうして?」
圭太が聞いてきた。
「キスしながらのほうが感じるから。違う?」
圭太の腰を抱き、引きつける。
下から小刻みに揺すってみた。
圭太は拒否する素振りを見せず、目を細めてその感触を噛み締める。
「どう?」
「うん、感じちゃう…すごく」
忙しない口づけに掻き立てられてか、夢中で圭太が腰をくねらせ始めた。それに呼応するように玄一郎も動かした。
足と足を絡ませ、隙間無く密着しながら快感を掘り起こす。
「あ…あぁ」
唇の角度を変えるたびに、甘い吐息が圭太の口から漏れる。
そして、股間が湿り始めた。
チラと目を合わせただけで通じ合うと、二人は身体を起こし、着ていたものをそれぞれ脱いだ。
もう圭太は恥じらう様子は見せず、躊躇いなく玄一郎が広げた腕の中に飛び込んできた。
キスをしながら、足と足をきつく絡ませる。
二人の下腹で寄り添って勃った二本を擦り合うように、無我夢中で腰を動かした。ひっきりなしに溢れ出す先走りが潤滑剤になる。
(こんな…思春期の少年みたいなことを…──)
玄一郎には自分をからかう余裕があるつもりだったが、まともな思考を手放すまでそれほど長い時間はかからなかった。
大人の男が目指すべき快感ではないはずなのに──いや、だからこその新鮮さか。このもどかしい感じにゾクゾクする。
- プラチナ文庫
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