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ジェイド・タイガー

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書籍紹介

私の心は、彼が持っている。

僚艦の自壊システムを起動した艦長のカナエ。死を覚悟した中で脳裏に浮かぶのは、共に進もうと約束しながら別離せざるを得なかったライオットの姿だった。会いたい──艦の中枢頭脳が拡散した思慕。異次元を彷徨う一族・翠虎を率いるライオットは、呼び掛けに応えた。彼がかつて別れ際の逢瀬でカナエの背中に咲かせた想いの徴。それが大きく育てられていたことに歓喜して……。

立ち読み

 二人は一緒に眠っていたが、その夜。
 ライオットは絡めていた指を持ち上げて、指先にキスをした。
 それ自体はカナエは不思議に思わなかった。肩口に顔を埋められる事も。
 だが、口許にキスされて、目を見開いた。
 今度は、唇へ。
 瞶めてくるライオットの瞳の色に、カナエは目を閉じ、彼の頬を両手でとらえるとぎこちないキスを返した。
 それが、夜のはじまり。
 当然乍ら、精通はとうに来ていたし、性について相談する兄もいたから、知識はあったけれど。
 他の級友は知らないが、彼等の間で、性的な話題が出た事はなかった。好みの異性や同性、経験の有無だとか。
 ただ、カナエは、自分が無知だという事だけは、理解出来た。
 触れ合う事の、なまなましさ。
 互いの裸体など、訓練後のシャワー室で見慣れていた筈なのに、今、まったく違うものになっている。
 股間の熱。
 汗。
 息。
 快感を探る唇と指。
 男性同士のセックスでは、事前にいろいろと準備が必要なのだと、羞恥で消え入りそうになりながら、カナエは翻弄された。
 後孔をさんざん指でまさぐられ、そこに快感が潜んでいるのだと教えられて。ライオットの性器を受け入れる。
「…っ、た…」
「やめないよ…?」
 余裕のない荒い息に、カナエは思わず微笑んだ。
 それは余計にライオットを煽った。
 上がる啼声。
 それは、今迄に互いに耳にした事のない音。
 自身の声であっても、他人の声であっても。
 気を失ったカナエが目覚めると、寝台も自分の身体もきれいになっていた。
 どこまでライオットに晒したのか、地面に穴を掘ってどうにかしたくなるが、後孔まで浄められた身で今更か。
 それから残りの日々は、ライオットに塗りつぶされた。
 セックスのなまなましさと、惑乱。
 自分が自分でなくなる感覚。
 二つの身体が、確かに、ひとつになる瞬間があった。
 けれど、所詮、人間は孤独なのだと、身体を離せば思い知る。
 寝台の中ではなく、手を繋いでいるだけの時の方が、指先から混じりあってゆく様な気がするのが不思議だ。
 カナエは、悦楽の存在を知った。
 行為の最中は、熱に浮かされて、あらぬ事まで口走って、後から羞恥に叫びだしたくなったりもするけれど、ライオットの手が肌に触れると、何でも受け入れてしまうのだ。


 ライオットは、眠るカナエの髪を撫でる。
 カナエに深く受け入れられながら、ライオットにも、大きな不安はあった。
 カナエに、徴が顕れる僅かな間であったけれど。
 ライオットの一族は、ある生態を持っている。その一つが、情を交わした相手とのつながりだ。心身ともにつながった相手には、徴が顕れる。
 どこにどの様な形で徴が出るかわからない。
 想いを交わしたからといって、必ず顕れるとは限らない。
 ───駄目か?
 カナエを抱いて得た確信の中に混じってくる、僅かな失望感。
 が、然程待つまでもなく。
 ライオットは、詰めていた息を長く吐き出した。
 感動と共に。
「…見事に、咲いた」
 自分は、想い、想われている。
 その証。あかし。
 形に見えるものに拘るのは愚かかも知れないが、誰しも、確信が欲しいのだ。
 どれ程愛しても良いのだと認められているしるし。
 ライオットが見守る中、またカナエの背はもとの色を取り戻す。
 だが、それは彼がカナエを抱く時、必ず浮かび上がってきた。
 そして、僅かに広がり続けていた。
 この色が彼から消えない事を願いながら、ライオットは体中に口付けを落とした。


 一週間はあっという間に過ぎる。
「さよならだ」
 ───行かないで。
 そう、云いたい。
 それは口に出さずとも、目がより雄弁に語る。
 ライオットは苦しげな表情でカナエの目を掌で覆い、口付ける。
 舌先を噛まれたカナエはびくりとしたが、目を閉じてライオットの上腕に手を添えた。
 泪が溢れて顎を伝い、床の色を変える。
 ───泣かないで。
 そう、云えない。
 一緒に行こうと云えたなら、どんなにか良いだろう。
 自分は無力だと、ライオットは思い知る。
 彼を護りたいと思っても、今は何の力もない。
 必要とされる場所があって、それは果たさなければならない務めだと思うから、行く。だが、カナエの心は持ってゆくし、誰にも触れさせない。
 彼にゆるされる他者に侵される事のない唯一の領域だ。
 車を呼んでカナエを送り出したライオットは、虚空を睨んだ。
 空間を割く様にして、壮年の男が姿を見せる。
「お迎えに上がりました」
「行こうか」
 その空間の裂け目へと、ライオットは足を踏み出す。
 男がその後に続き、邸内は無人となった。

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