薔薇の下には
セックスしたら、好きになってもらえるかな
両親の失踪と、夜知らぬ間に身体にできる傷はエイリアンによるものと主張するオカルトマニアの久幸。脳科学を専門とする大学教授の名富は、その解明のため彼の住む豪邸へ泊まりこむことに。エイリアンなんて、信じていなかった。だが、怯える久幸の無意識の媚態に煽られた夜、淫靡さと少しの恐怖を感じる夢を見た。そして自宅が火事に遭い、久幸の言動に不審を感じ始めて……。
これからセックスをするんだと思うと、息ができなくなる。どう振る舞っていいのかまるでわからなくて、頭が真っ白だ。その証拠に、気がつけばベッドの上で正座している。
「……ん……っふ、……っ」
スプリングが効いていて、その上マットに二人分の体重がかかっていたから、正座だとひどくバランスが取りにくかった。手をマットについて身体をどうにか支えていたが、唇が離れたからとにかく足を崩そうともぞもぞしていると、名富に上体を抱きとめるようにして、ベッドの上に仰向けに押し倒される。
「緊張してる?」
久幸の状態は一目瞭然だったのか、からかうように尋ねられた。認めてもよかったが、久幸はツンとそっぽを向いた。
「そんなでも」
少しでも自分を大人に見て欲しい気持ちが強い。子供扱いされたくない。大人として扱われたほうがより愛される気がする。そんな気持ちがあって、反射的にそう言っていたが、身体は正直だ。名富と触れあうたびに、鼓動が跳ね上がってまるで力が抜けない。
横たえられた久幸の顔の横に腕を突かれて、唇が重ねられた。
そうしながらも、覆い被さった名富にシャツをめくりあげられる。肌に触れられるだけで、そこから電流が走るような感覚が広がっていく。
また乳首に触れられるのかもしれないと思っただけで、そこが意識されてならない。
感覚が集中したせいもあるのか、キスを続けられながら乳首の色づいたあたりを指先でかすめられただけで、ざわりと戦慄が駆け抜けた。触れるか触れていないかわからないぐらいのわずかな刺激なのに、それだけでもぞわぞわするほど、全身の感覚が研ぎ澄まされている。
触れられているのか、まだなのか確かめたくて、そこに視線を向けたくなっていると、名富がようやく唇を解放して囁いた。
「おまえ、乳首好きだね。今日もまた、ここだけでイっちゃう?」
声は甘い響きを秘めていた。いつもとは違う、セックスのときの名富の声だ。そんな違いに気づいただけでもときめく。名富がそんな姿を自分に見せてくれるのが嬉しい。
──だけど、今日の僕は違うから……!
前回は何もかも初めてで、緊張しすぎて余裕のない状況に追いやられたが、二回目な分、多少は余裕を持てる気がする。そうありたい。
「……イか……ないよ……っ」
そうするつもりで言うと、名富は楽しげに笑った。
名富の指の腹が、久幸の乳首の色づいた部分をそっとなぞる。確かな感触が敏感な部分から甘く広がっていって、その中心が硬く凝っていく。
だけど、名富はその中心には触れることなく、ただ周囲をなぞるばかりだ。そうしながら横たわる久幸の首筋に口づけたり、耳に吐息を吹きかけたりして、ビクビクさせてくる。
「ッン……っ、……ぁ」
できるだけ落ち着いていようと思うのに、全身が敏感になりすぎていた。耳や髪に触れられても、普段なら何でもなくやり過ごせるはずなのに、今はそうではなかった。些細な刺激を逐一拾い上げては、全身の感覚がますます研ぎ澄まされていく。
乳首が尖りすぎて疼いて仕方なくなってきたとき、そうなるのを待っていたように名富の指がその粒を撫でた。ビクンと全身が跳ね上がる。
「っん!」
のけぞるのと同時に、さらに張り詰めたそこをぎゅっと胸板に押しつけるように指先で押しつぶされ、性器を直撃されたような快感が駆け抜けた。
ひくつく久幸の乳首に、名富は手をからみつける。
こりこりとした乳首を、そのまま指先で転がされた。跳ね上がる身体を押さえこまれながら、その小さな部分に嫌というほど刺激を送られる。そこから全身に流しこまれる快感に、久幸は翻弄されるばかりだった。
ただ指先で優しく転がされるだけでも気持ち良かったし、少し強めに押しつぶされて、全身がびくりとするほどの刺激が走るのもたまらない。与えられる快感に酔っていると、触れられずに尖っていたもう片方の乳首に名富の唇が近づいてきた。
「っぁ、……んぁ……っ」
触れられる前から、そこはチリッと疼いた。
肉厚の舌に覆い被さられて、敏感な粒をもてあそばれる。それだけで、鳥肌が立つような刺激が広がった。反対側の乳首は指先できゅっとつままれながら、くりくりと転がされている。その左右違う刺激が久幸をますます混乱させていく。
ただ舌をそこに這わせているだけでも、ぞわぞわとした刺激が後頭部まで広がり、服の下で性器が疼くのがわかった。
柔らかな舌の刺激と、指による強めの刺激が久幸の身体を暴走させ、のどから漏れる甘ったるい声が止められない。
頭はひどく混乱しているのに、身体は与えられる快感に敏感に反応していた。
舐められるだけの甘い刺激に慣れる前に軽く吸われ、それに指による反対側の刺激が混じる。指でいじめられている乳首に感覚が向かうと反対側に軽く歯を立てられ、歯でくわえられたまま引っ張られて、さらに指でも引っ張られる。
服の下で痛いぐらい性器が張り詰める感覚に耐えられなくなっていると、名富の手が乳首から離れて下肢まで伸びた。
部屋着の上からそっと形をなぞられ、びくんと久幸の腰が跳ね上がる。
さらに先端を探すように手を動かされると、びくびくと身もだえずにはいられなかった。だが、刺激に反応して胸を突き出すと、そのたびに乳首に歯を立てられるから、できるだけおとなしくしているしかない。
部屋着の中に手を突っこまれ、下着越しに握られた。そんなふうにされて、久幸は息を詰めるしかない。布越しの焦れったさはあったが、それでもペニスに与えられる刺激は強すぎて、何か訴えようとしても喘ぎにしかならない。
「っん、ぁっぁ、っダメ、……そこ……っぁ、触っ、ぁ、あ、あ……」
「ここも弱いんだ? 今日は前よりも、もっとすごいことしようとしているんだけど、……どうするか、わかる?」
からかうように言ってから、名富は覆い被さっていた上体を引き起こした。
寝転んだままの久幸の腰に手を伸ばして、部屋着ごと下着を脱がせてくる。久幸も軽く腰を上げて協力したが、熱くなった性器がぷるんと外気にさらされて余計に恥ずかしくなる。
とろとろと蜜をあふれさせている性器に触れられるとばかり思っていたのに、名富の手が伸びたのはそこではなかった。
名富に膝を高く抱え上げられて左右に開かされ、閉じられなくされる。その奥のすぼまりに、とろりとしたクリーム状の何かが上から垂らされた。
「っぅあ!」
予期せぬ感触に身体がすくみあがったが、力が抜けたタイミングで、ぬるぬるになった指がつるんと中に入りこむ。その初めての感触に、久幸は息を呑まずにはいられない。
そんなところに指を突っこまれるのは初めてだったから、受け止めきれない。反射的に指を押し出そうと力が入ったが、逆にずるっと押しこまれて、その感覚に狼狽した。
「ぁあ、っ……ダメ、あ、あ……」
その指は躊躇なく根元まで久幸の中に突きこまれる。その感触がありありと伝わってきた。
男の場合はこの穴でつながるらしいが、指だけでいっぱいになるようなこの部分に、大きなものが入るとは思えなかった。ドキドキしながら見たエロい映像などではしっかりとくわえこんでいたが、どんな魔法を使うのだろうか。
──教授の指が、……僕の中に……ある……。
それだけで、下肢がジンと痺れた。
指が中に一本あるだけでも、奇妙な感じがしてならない。まともに身体を動かせなくなるし、呼吸をするたびに指がそこにあることを思い知らされる。
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