和カフェ瑠璃庵の妖しな日常

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本価格:660(税込)

  • 本販売日:
    2016/12/09
    ISBN:
    978-4-8296-2623-8
書籍紹介

浄化するには、キスとセックスをしなければならない!?

無自覚ながら、あらゆる霊体を引き寄せてしまう憑依体質の真秀。「鎮清者」と呼ばれる異能者である壮輔の店でアルバイトをすることになるが、相変わらず店を出た途端に憑かれてしまう。なので壮輔に結界を張ってもらうが、その方法はハグ。そして結界を破って憑いたものを浄化するには、キスとセックスが必要だった! 素っ気ないながらも、誠実に対応してくれる壮輔に真秀は……。

立ち読み

「悪霊や妖に憑依された人を浄化するには、まず『浄化焔』を口から体内に入れる。さらに、こいつらを弱らせる目的で『浄化精』と呼ばれる特殊な液体で、とどめをさす。即ち、俺とキスとセックスをしなければならない」
「な……」
「きみの心身ともにダメージを与える手段で申し訳ないが、浄化するのを許可してもらえるか」
「……っ」
 思い切り、誠実に頼んでこられた。身体を繋げるとの手法に、驚きがないといえば、嘘になる。戸惑いもあったが、心理的な痛手は壮輔にもあるはずだ。
 好きでもない、まして同性と性交しなくてはならないのだ。
 現在、一番怖いのは、悪霊に憑依されそうになっている事実だろう。一刻も早く、今の状況から脱したかった。
 なにより、壮輔を信じている。彼が言い、行うことならかまわないと、真秀は迷った末に首肯した。
「お願い、します」
「了解だ」
「いえ。こちらこそ、お手間ばかり……っんう?」
 ふと、真秀の膝裏を通った手が、口元へ翳される。
 飴玉大の青白い光が、宙に顕れた。それを己の口に含んだ壮輔が突然、深いキスをしてきて、真秀が両眼を見開く。
「!」
 このキスが恐ろしく強烈で、目を白黒させる。まるで、火の塊を飲み込んだような感覚と、正反対に氷点下の冷気が入り混じったような体感に襲われた。
 まさしく、筆舌に尽くし難いシロモノだ。おそらく、例の『浄化焔』を口移しで入れられたに違いない。
 悪しき存在を灰燼に帰すというほどの炎が、のどをゆっくりと通っていく。
 存外、苦痛はまったくなかった。右腕の浄化時は、細心の注意を払って力の調整をしていたのにと不思議だ。
 浄化法の種類によって、匙加減に差異があるとみえる。
 ただ、『浄化焔』のキスが原因か、声が出なくなっていた。
 間もなく、三階の彼の自宅に着く。慌ただしく鍵を開け、玄関を上がった。廊下を運ばれて、リビングらしき部屋の大きな黒い革製のソファに下ろされる。
 体内の『浄化焔』の影響か、意思に背いて身体が動く現象も、おさまった。
 いささか鈍いけれど、真秀の意のままに動かせる。
「なるべく手早く、だが、丁寧にする」
「……っ」
 真秀の下肢の衣服に手をかけて、壮輔が言った。まず、ギャルソンエプロンが外され、下着ごとサンドカラーのパンツを脱がされて、下半身が剥き出しになる。
 浄化の正当な行為と承知でも、恥ずかしいものは恥ずかしかった。
 敬愛する相手だけに、いちだんとだ。ぎくしゃくと股間を両手で覆った真秀へ、心配そうに問われる。
「たぶん、そろそろ声も出る。どうだ?」
「ぁ……あ~、あ~。…はい。出ました」
「喉に違和感は?」
「まだ、少しありますけど」
「時間経過とともに、なくなっていくはずだ。ひとまず、第一段階はクリアだな」
 今は、胸のあたり全体が温かかった。些少ながら、冷える場所があり、それがあちらこちらへ移動する。
 そう言うと、悪霊が『浄化焔』から逃げているのだろうと応じられた。
 ソファの横のローテーブル上にあったハンドクリームを、彼がふと取る。
 手のケアかなと考える真秀は、童貞だ。性体験がないからこそ、割合あっさりと『交媾浄化』の申し出を受けたところもある。
 クリームを大量に手のひらへ出す壮輔を見て、眉を寄せた。
「壮輔さん、多すぎませんか?」
「慣らす分には、適量じゃないか」
「…慣らす? って……あ!」
 用途を察した真秀の目元が、朱に染まる。逼迫状況で、呑気な誤解をしていた自分が、いたたまれなかった。
 彼も勘づいたと思うが、素知らぬふりでいてくれた。
「脚を開いてもらえるか」
「うっ……」
「最低限のことしかしない。時間との戦いなんでな」
「は、はい。…したことはありませんけど、大腸検査だと思います」
「……まあ、好きな気の紛らわせ方で、乗り切ってくれ」
「頑張ります」
「俺も全力を尽くす」
 初体験でも、同性同士がどこを使って性交するかは、さすがに想像できた。
 局部を覆っていた手を退かされ、脚を開かされる。自身でさえ、直にはほぼ触れない後孔へ触れられて、小さく震えた。
 固く閉じた窄まりを、クリームをまとった指先が撫でる。襞のひとつひとつに、円を描くように塗り込められた。
 うっかり気を抜くと、ぬるりと侵入してきそうで息む。
「くぅ…っ」
「淀井くん、力を抜け」
「で、でも……っふ」
「いくら緊急事態といえど、きみを傷つけたくない」
「壮輔、さ…」
「呼吸は深くだ。力むと、きみがつらい」
「努力…します」
「ああ」
 言ってみたものの、これが難しかった。とうとう壮輔の指が後孔内へ挿ってきてからは、なおさらだ。
 異物感に動揺し、再度、息を乱す。排出しようと肛門括約筋が無意識に蠢き、彼の指をきつく締めつけた。
「うぅ……んん」
「深呼吸しろ。淀井くん」
「っふ、ぁ……く」
 意欲はあるが、実践できない。もどかしさに唇を噛んだ真秀が、思わず息を呑んだ。
 後ろのみに気を取られていたら、性器へ指を絡められたせいだ。感じる箇所をピンポイントで揉みつつかれ、意図せぬ嬌声が漏れる。
「あっ…あ、あ、んぁん」
「それでいい」
「ゃ、ん……壮輔さっ…」
「なおざりだが、気は削がれるだろ」
「ありがと…ござい……ま、す」
「いや」
 初心者の真秀を気遣っての行動らしかった。時間との勝負だそうなのに、できうる限り慮ってくれる心配りが面映ゆくも、ありがたい。
 壮輔の思惑どおり、前後を並行して刺激され、意識が分散した。知らず、余分な力が抜けていた。
 他人に性器を弄られるのも、真秀は初めてだ。自慰もあまりしないので、すぐに芯を持ち、先走りを垂らし始める。
 そこへ、二本目の指が押し入ってきた。
「あ、っんう…」
「痛いか?」
「ぃ……たくは、な……です…けど」
「そうか」
「んっ、んっ…ぅ」
「声は我慢しないほうが、いろいろ発散できるぞ」
「…励みま、す」

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