美味しいオカズをいただきます。
俺、何回も作元さんをオカズにしたんです。
「……おっきい」
平均的な天羽のものと比べるまでもなく、初めて見る作元のものは大きい。
こくりと唾を飲み込んで、そっと手を這わせた。
目の前の男が、息を飲む。堪えるようなその表情が色っぽくて、もっと見たくて、天羽は作元のものを大胆に扱き上げた。
「作元さんの、熱くて、大きいです、ね」
「っ……」
感触と、大きさ、それを覚え込むように、丁寧に愛撫する。想像していたよりずっと、興奮した。
お返しとばかりに、優しく労るような愛撫を施していた作元の手も遠慮なしに動き始める。
「ん、……っ」
強いくらいが好きなので、たまらず声が漏れそうになった。
「痛い?」
熱っぽい声で問われ、天羽は首を振る。もっと強くてもいいくらいだ。そんな気持ちが素直に口から零れた。
「……もっと」
「え」
「もっと、強く……っ、あっ」
手の中のものが大きくなる。そして、天羽のものを愛撫する作元の手が、先程までよりも激しく動きはじめた。
お互いの上擦るような乱れた呼吸と、性器の濡れた音、そして淫らな匂いが部屋を満たす。
どちらが先に相手を絶頂に追いやることができるか、という勝負をしていたわけではなかったが、旗色は自分のほうが悪いらしい。
性器の奥のほうから、ふわふわと痺れるような快感が湧き上がって来て、終わりが近いことを悟る。
「ん、……んんっ」
堪えなきゃと思うと、相手に施す愛撫の手が疎かになる。
「……出そう?」
「んん、まだ……駄目ですっ」
自分でも驚くくらい、声が甘く上擦る。駄目だと言いながら逃げた腰を、押さえつけられた。
ついに相手に触れていた手が止まる。それを咎めもせず、作元が耳元に顔を寄せた。
「いいよ。出して」
「でも、待っ……あっ、……あっ!」
堪え切れず、天羽は作元の手の中に熱を吐き出した。
以前のように連日していたわけではないからか、達した性器を擦られ続け、とろとろと溢れるものがとまらない。
「あ……、あー……」
膝から力が抜け、ドアに凭れたままずるずると座り込みそうになる。それをドアと自分の体で挟むように、作元に抱き支えられた。
まだ硬い作元のものが、下腹に擦れる。作元は自分のと、力のなくなった天羽の性器とを一緒に扱きあげた。
「や、ぁ……っ、あぁっ」
達したばかりで敏感な性器を擦られ、相手のものが触れるのを意識させられ、眩暈がするくらい興奮する。
「駄目……待って、ください、待って」
涙に濡れた声は、思ったよりも淫らに響く。けれど作元は手を止めてくれない。
「……っ、やべ」
「んぅ、あ」
いつもより荒い言葉遣いになった作元に、自分でも驚くくらい感じる。
素顔を見せてくれたようで嬉しいと思う一方で、この場面ではすごくいやらしく聞こえてしまった。膝が震え、天羽は作元にしがみつく。
「や……あっ」
「っ、天羽さん……っ」
「んん……!」
抱き付いていた大きな体が強張り、それから遅れて下腹に熱いものがかかる。
作元が、詰めていた息を吐く。抱き付いていた手から力が抜け、天羽はずるりとその場に座り込んだ。
今達したのは自分ではないのに、頭が霞がかったようにぼうっとする。まだ快感の残滓が残っていると言いたげに、静電気のように肌がちりちりとしていた。
──人にされるのって、こんな気持ちいいんだっけ……?
自分でするときより、何倍もよかった、と息を吐く。
「……天羽さん、大丈夫?」
頭を優しく撫でられ、顔を上げる。
「ん。……気持ち、よかったです……すごく」
ほう、と息を吐き出すと、その様子をじっとみていた作元が「ああー」と太い声で唸ってしゃがみ込んだ。
頭を抱えている作元は、「平常心」と一言呟いて顔を上げた。
「さ、作元さん……?」
「……今日は、このくらいにしましょう」
ひどく理性的な科白を吐きながら、その表情は断腸の思いである、と言いたげに苦しそうである。
「え、なんで」
部屋の隅にあるウエットティッシュを手に取り、天羽の汚れた下肢を拭いてくれる。俺も、と申し出ようとしたら断られた。
触られたら一度じゃ済まなくなると言われれば、赤面しつつ手を引っ込めるしかない。
「……もっとしたいけど、これ以上は、お互い明日も仕事だしね。それに、こんな場所では……」
スタッフルームは、二畳ほどの畳敷きの部屋だ。本当に荷物を置き、着替えができる程度のスペースしかない。一応仮眠もとれるようにはなっているようだが。
身支度を調えながら、「それもそうですね」と返す。その様子をじっと見つめてから、作元も服の乱れを直した。
緩んでいたネクタイを締め直していると、指先で頬を撫でられる。
「もー……」
少し怒ったような声を出す作元に、天羽は顔を強張らせる。
「え……?」
「エロい顔しないで。折角ここで踏みとどまってるのに」
「……えっ?」
意外な科白が返って来て、つい声を上げてしまう。そんな顔をしていたつもりはなかったので、否定するように手を振った。
「いえ、してないですよ? そんな顔……」
「無自覚?」
「してませんって! 今のだって、その、すごく気持ちよくて、十分満足しましたし……一人でするのとは全然違ったし」
他者の温もりに触れるのは本当に久しぶりで、こんなだっただろうかと戸惑うくらいだった。
「明日からのオカズに事欠かない気もしますけど、本物を知っちゃったら却って物足りなくなりそうで怖いような……」
正直にそんな胸の内を吐露すると、作元は「あのね」と睨みつけてくる。
「ここでされたくなかったら、煽らない」
窘めるような口調には迫力があり、大人しく口を閉じる。煽ってない、などと減らず口を叩けば、本当にこれ以上されそうな気がした。
実際しても構わないのだが、彼が堪えているのを無に帰するのも無神経というものだ。
「……それに俺、どちらかといえばタチだったので、どうなるかなって思ってたんです。実は」
「え!?」
心底驚いたと言わんばかりの声を、作元があげる。
「え……ええと、俺もそっち側なんだけど、もしかして抱くつもりだった?」
「いえいえ! いいって言われたら、抱くのも吝かではないですけど」
天羽の返答に、作元が複雑な中にも安堵の表情を浮かべる。
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