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後輩が目を合わせてくれません

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書籍紹介

「なんでお前、俺のケツ揉んでんの?」
「だ、だってそこに先輩のお尻があるから」

 映研の後輩・主税と目が合わない。仲が良かった後輩の態度に落ち込む航流は、彼からの突然の告白に茫然とした。が、やっぱり目が合わない!問い詰めると、好きすぎて緊張して顔が見られないと言う。
呆れる航流だったが、抱きついて互いの顔が見えなければ平気と知り、慣れるまでくっついて過ごすことにした──けど、だからって電車の中でケツ揉むか!? このムッツリえっち!
 
立ち読み
 「っ、主税お前……っ」
「すいません……でも、先輩が悪いと思うんですけどこの場合」
 迫られ、ドアに押し付けられる。身動きが取れないので、主税の顔は見えない。心なしか、自分の首筋に当たる息が熱い気がする。
 尻だけでなく、主税の手は内腿や脚の付け根などにも触れて来た。痴漢に触れられたときはなんとも思わなかったのに、主税に触られているとドキドキする。
 ──いや、ドキドキっていうか、電車の中でこんなことしてるせいでびくびくしているだけな気もするけど……!
「ぅ……」
 首筋にかかる熱い吐息や、肌同士が触れるたびに、びく、びく、と体が跳ねてしまう。
 なんだか膝も震えてきてしまって、航流は主税のシャツを握りしめた。支えるように腰を抱かれて、航流はぎゅっと目を瞑る。
 こんなところでなにすんだ、と怒鳴りつけたいが、こんなところだからこそ言えない。航流は一方的にされている立場なのに、いけないことをしているような気分になって鼓動が早まる。
 裾をまくる手が、素肌に触れた。汗ばんだ熱い手の感触に、航流は息を飲む。
「や……」
 声を出しかけた航流の耳元に「しっ」という声が響く。
 静かに。
 どこか上擦ったような声で囁かれ、航流は声を飲み込んだ。縋るように主税の胸元に顔を埋め、必死に堪える。
 ──こいつ、ちょっ……どこ触って……。
 徐々に大胆に動き始める手は、痴漢が触れたところをなぞる様に触れている。今まであれだけ平然とできていたのが嘘のように、落ち着かない。
 うぐ、と声を殺していると、「あの」と声をかけられた。
 はっとして見やると、二人のすぐそば、手すり近くの座席に座っていた女性が、航流を見上げている。
 見られた──そう思って血の気が引いた。同時に、女性は立ち上がるような体勢に入りながら口を開く。
「あの、具合悪いんですよね。大丈夫ですか? よかったらどうぞ」
「あ……」
 応えるより早く、電車が止まる。背後のドアが開いて、航流は「ありがとうございます、大丈夫です!」と言いながらホームに降りた。主税も慌てて追いかけてくる。
 親切な女性を乗せたまま、ドアは閉まった。電車が動き出すのと同時に、航流もよろめきながらベンチに腰をおろす。
 降りた駅は、主税の家の最寄り駅だ。
 自己嫌悪に項垂れていると、主税が前に立つ気配がした。
「……お前、ほんとふざけんなよ……ほんと、マジで……」
「す、すいません……」
「俺、今一生で一番恥ずかしい思いをしたんだけど!? 普段目も合わせてくれないくせに、一体なんなんだよお前!?」
「すみません……!」
 航流が叫ぶと、主税は負けじと大声で謝罪をし、航流を抱きしめた。唐突な抱擁に、一瞬呆けてしまう。
 はっと我に返り、航流は慌てて主税の背中を叩いた。ホームにいた人々が、なんだなんだと好奇の目を向けてくる。
「こら、離せ……離せって、ばか!」
 恥ずかしいだろ、と半泣きで怒ると、主税はすみませんともう一度謝った。
 色々言いたいことはあったが、こんな状況で今の出来事の真意を問い質すこともできないし、かといって悠長に抱きつかれてもいられない。もうこうなったら遠慮せずに問い質してしまおうと、航流は開き直った。
「主税、離さないと怒るぞ。本気だぞ」
 低い声で言うと、主税はびくりと体を揺らし、航流から素早く手を離した。一応聞き分ける理性があったことにほっとして、航流は主税の手を取った。そしてそのまま改札に向かってずんずんと歩く。
 主税はアパートに着くまで一度も振り払おうとしなかったし、文句も言わなかった。
 アパートの鍵を開けて、どうぞと促してくる。
「……お邪魔します」
 主税の家は、相変わらずすっきりと整っている。
 ベッドの上にどんと座ると、主税が「あっ」と声を上げる。なんか文句でもあるのかと睨めば、また目を逸らされた。
「このムッツリえっち」
 正直な感想を伝えると、主税は「すいません!」と叫びつつ、口元を押さえて顔を逸らした。
「電車の中でケツを揉むか、普通」
「す、すいません……でもそれは先輩だって責任の一端があります!」
 珍しく口答えをした主税に、航流は「はあ?」と顔を歪める。
「なにそれ。俺が悪いって? 俺のどんな悪行がお前に俺のケツを揉ませたっていうんだ? ん? コラ」
 航流はずいと身を寄せながら睨むと、ひぃ、と情けない声を出して主税が後退る。
 密着して座っているときや、先程までよりよほど距離があるというのに、顔を見合わせたというだけでこれだ。
「……お前、どうやったら『慣れる』わけ?」
「そ、そんなの俺にもわからないですよ!」
 ふうん、と航流は主税の手を掴む。右手と左手を「恋人繋ぎ」に絡ませ、自分の胸元へ運ぶ。
 主税の手の甲を心臓の上に置くと、主税が恥ずかしそうにしながら、「先輩!」と窘めるような声を上げる。
「男は狼だって、俺前に言いましたよね」
「だから俺も男だって」
「うー……だから、痴漢に触られた感触を俺の手で上書きとか、そういうこと不用意に言うから、俺だって理性が……っ」
「……そこ?」
 意外なところが火種になっていたのだと、航流は首を捻る。主税のツボはよくわからない。
「俺だって、痴漢野郎が触ったところ全部触りたいとか、もういっそ滅茶苦茶のどろどろにしたいとか思ってるんですよ! それなのに、電車の中でああいうこと言うの卑怯です……!」
 滅茶苦茶はともかく、どろどろという擬音を出すようななにをされるのか。
 それを指摘すると、主税は顔を押さえて倒れ込んだ。アザラシのように床に転がった主税は「すいませんすいません」と謝罪の言葉を連呼している。
 航流がその腰の上に跨ると、「ひい!」と悲鳴を上げた。上体を屈めて迫ると、顔を隠してても気配で察しているのだろう、主税はひいひいと騒ぐ。
 ──避けられるのは納得いかないが……なんかちょっと楽しくなってきたぞ、おい。
 ちょっとだけ、好きな子をいじめてしまう子供の気持ちがわかってしまう。顔を覆っている手をつんつんとつつきながら、航流は「お前さぁ」と口を開く。
「こんなんなるなんて、今までどうやって恋愛してたわけ?」
 まさか寝ている相手を押し倒し、寝ているままにどうこうしていた、というわけでもあるまい。
 純粋な興味として問うた航流に、主税は指と指の隙間からちらりと目を覗かせた。
「……です」
「はい?」
「……好きな人と両想いになるの、先輩が初めてなんです。わかんないです」
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