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お医者さんのお引っ越し

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書籍紹介

素敵すぎるプロポーズに「お返し」をしなくては、ですね。

恋人の九条が店主を務めるフラワーショップの二階に、すっかり居着いた医師の甫。相変わらず「甘やかす権利」をフル活用され、むずがゆいほどに甘い日々を過ごしていた。そんな愛の巣である九条宅を二人の終の棲家にすべく、ついにリフォームすることに。互いを想い過ぎるが故の行き違いもあったけれど、どうにか着工。 工事中は甫のマンションで、新婚生活の予行練習を満喫して……。
立ち読み
「お前が俺を支えてくれたように、いつかお前につらいことがあったとき、俺が支えられたらいいと思う。そういう強い人間になれるよう日々努力しつつ、いかなるときもお前の傍らにいたい」
「……大野木先生……」
 早くも感極まって、九条は今度こそ甫に触れようとする。だが甫は、視線でそれを押し留め、こう続けた。
「本気でそう思っているくせに、臆病な俺は、このマンションを手放せずにいた。いつかお前が俺に愛想を尽かすんじゃないかと怖くて、逃げ場所を確保しようとしていたんだ。だが、もう腹を決める。お前がかつて俺から離れないと言ってくれたように、俺も生涯をお前と共に過ごす。……婚姻届も指輪もないが、その代わりに、お前の家をリフォームして、二人の終の棲家としよう。このマンションは、潔く手放す。俺の考えに同意してくれるなら、この手を……」
 そう言いながら、甫は酷く緊張した様子で、九条のほうに右手を差し出す。
「ああ……もう」
 九条は身を屈めると、両手で甫の右手を包み込んだ。そのまま自分も床に座り込む。
 甫は、幾分不安げに、眼鏡の奥の切れ長の目を瞬いた。
「その、お前の納得できるようなプロポーズだっただろうか」
「これ以上、素敵でロマンチックなプロポーズはありませんよ! ああ、僕はこの夜を一生忘れません」
 熱っぽく返して、九条はもう我慢できないというように、甫を抱き寄せる。中途半端に膝を崩し、九条に強く抱き締められた甫は、息苦しそうに小さな咳払いをした。
「そ……それはよかった。ところで、俺の手を取ってくれたということは、本格的にリフォームの話を進めるということだな?」
 甫の頬に愛おしげに口づけ、九条は半泣きで破顔した。
「勿論です。……ただし」
「ただし?」
 途端に不安そうになった甫に、九条はやけにハキハキとこう言った。
「このマンションを手放すのは、リフォームが終わってからのほうがいいですね。リフォームといっても、建て替えに限りなく近い大工事になるでしょう。その間、荷物を置いて、僕たちが暮らす場所が必要ですから」
「あ、ああ、そうだな。なるほど」
 ロマンチックな気分に浸ったのも束の間、恐ろしく現実的なことを言い出した九条に呆れるやら感心するやらで、甫は目をパチパチさせる。
 だが九条は、すぐに華やいだ声音で言った。
「ああ、楽しみです。僕たちの終の棲家を構えることも、このマンションに仮住まいすることも。でもまずは、素敵過ぎるプロポーズにお返しをしなくては、ですねぇ」
 ですねぇ、の響きに一抹の妖しさを感じて、甫はギョッとする。さすがに九条と一緒に暮らすうち、彼のいわゆる「スイッチが入った」タイミングを察することが、少しは上手になった甫である。
「お返し……とは?」
 答えを待たずして、甫はつい身体を離そうとする。だがそれを許さず、力強い腕で甫を抱きすくめたまま九条はにっこりした。
「そうですね。もとよりこの後、涼しい寝室の柔らかなベッドの上であなたを悦ばせて差し上げるつもりでしたが、それに加えて、つま先から綺麗なつむじまで、くまなくキスさせていただくことにします」
 それを聞くなり、甫は微妙に怯えた顔をして、九条の腕の中で軽くのけぞる。
「やめろ。そんなことをされては、俺が恥ずかしくて死ぬ。というか、それはお返しというより、むしろ仕返しじゃないのか」
「何を仰いますか。僕なりの、精魂を込めたお返しですよ。仕返しだなんて、実に心外です」
「だが、それはむしろお前が楽しい……」
「おや、僕が楽しい『お返し』ではいけませんか?」
「いけなくは……ないが」
 口ごもる甫の唇に今度は小さな音を立てて軽いキスをし、九条は畳みかけるように言い募った。
「では是非、今度はあなたが僕の想いを受け取ってください。ああ、それから、寝室までこのままお運びしても?」
「待て、俺はちゃんと歩ける」
「わかっていますが、僕があなたから一秒も離れたくないんです」
 言葉自体は甘やかだが、その口調には、有無を言わさぬ強引さがある。こうなっては、いくら抵抗しても、結局は丸めこまれて、されるがままになるより他はない。
 これまでの経験でそれを誰よりも知る甫は、なお弱々しく抗弁を試みた。
「好きにしろ。だが俺は、女性でも、小柄でもないぞ? 抱え上げるのはそう簡単ではないと思うが」
 すると九条は、あっけらかんと言い返した。
「あの夜、泥酔したあなたを布団まで運んだのが誰か、お忘れですか?」
「……そうだった」
 今度こそ降参して、甫は溜め息と共に身体の力を抜く。たちまち、九条の手が背中と膝裏に触れたと思うが早いか、大きく視界が揺れた。
「心配しないで。死んでもあなたを落としたりしませんよ」
 そう言って、九条は甫を抱いて立ち上がった。
 確かに細身ではあるものの、甫はそれなりに長身だし、人並みの筋肉もついている。その甫を軽々と抱き上げてしまうあたり、大柄だが優男に見える九条の腕力、恐るべしである。
(ああ、確かに意外なほど胸板が厚いし、背筋もしっかりしている……)
 ベッドで抱き合うたびに触れる九条の裸体の感触をうっかり思い出し、甫の頬がボッと火を噴く。
 
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