堕つればもろとも
これは、わたしの犬だ。
神の娘の証である黄金の髪を持つ珠玲は、男でありながら天姫として崇められていた。だが、祖国を救い成り上がった将軍・朔に嫁ぐことになる。すげなくしても一途な犬のように縋る眼差しで服従を誓うくせに、褥では餓えた獣のように珠玲を貪る朔。憎しみを募らせた珠玲は、敵国の間諜に騙され、毒を盛ってしまう。死に瀕してもなお珠玲に執着する朔は、心中を強いてきて……。
「ひっ…姫…!?」
「黙っていよ」
探り当てたものは先走りで濡れそぼち、爪先がぬるりと滑る。気持ち悪いと思うより愉悦が勝った。いつも珠玲を穢すおぞましいものをいいように玩び、朔に切羽詰った顔をさせている。なんて心地良いのだろう。
「はっ、ひ、姫…どうか、おやめ下さい…汚れてしまわれます」
「ふん、いつも私を穢しているくせに、私から触れるのは駄目だと申すのか? …やりにくい。そこに座れ」
傲慢に顎をしゃくると、朔はさんざん躊躇った末に褥に胡坐をかいた。すっかり開いた単衣の裾からは逞しい下半身と、はしたなく勃起した性器が丸見えで、珠玲は嘲笑う。
「何故そこをそんなにしているのだ。申してみよ」
「ひっ、姫…」
「申してみよ。さすればそなたの願いを聞いてやらぬでもない」
珠玲の囁きに巨根はドクンと脈打ち、浮かび上がった血管に血が漲った。どっと大量に零れ出た先走りが肉茎を伝い落ちていく。
奔出する欲望に、男はついに屈した。荒い吐息混じりに告白する。
「姫の…姫のおみ足をしゃぶり、姫のおみ足に蹴って頂いたからです」
「は…っ。そんなに私の足が好きか。私に蹴られて興奮するのか」
「はい。…好きです、大好きです」
そそり勃つ股間を隠しもせず、珠玲を狂おしく見詰めて男は断言する。
「好きです、好きです……好きです……申し訳ありません…」
まるで愛の告白のようだと思ってしまった己を珠玲は叱咤した。この男は別に珠玲を好きだと言っているわけではない。ただ獣らしく肉欲に従っているに過ぎないのだ。愛情などどこにも無い。朔にも…珠玲自身にも。
- プラチナ文庫
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