ふるえる恋の声
書籍紹介
傷つくだけってわかってる でもきっと、逃げられない。
極度のあがり症の高校生・深澤由樹には好きな人がいる。相手は自分と正反対の自由奔放な同級生の境浩之。遠くから眺めているだけでよかったのに声が好きだと言われ、境と友人のような関係が始まる。けれど境を前にすると喋ることすらできず、近づかれると逃げてしまう始末。そんな自分に嫌気がさしていた由樹は、偶然境の想い人の存在を知り、彼の前で涙を零してしまい――。
立ち読み
(ほんと、猫みたいだ)
以前、三吉に言われたことを思い出しながら、優しく頭を撫でてやる。しばらく俯いたまま視線をさ迷わせていた由樹だったが、不意に首を振った。
「由樹?」
「あ……の、触ら、ないで」
さらりと流れる髪に促され、手をそっと引き剥がす。もっと撫でていたいと思ったけれど、今はそれよりも拒絶されたことで胸が痛い。
戸惑いがちに瞳を揺らし、触れるのは駄目だろうかと彼を見る。見つめる先で、由樹は顔を赤らめたまま、わずかに顔を上げた。
目はまだ合わせられないらしく、宙をさ迷っている。
「あ……と、嫌だったか?」
これに由樹は弾かれたように顔を上げるものの、すぐに目を伏せると、ふるふると左右に首を振る。
大きく息を吸い込みながら、全身に緊張をみなぎらせて口を開いた。
「こ、まるから……嫌、じゃないけど、困る」
「嫌じゃない?」
「ない。……でも、こ、困る」
以前、三吉に言われたことを思い出しながら、優しく頭を撫でてやる。しばらく俯いたまま視線をさ迷わせていた由樹だったが、不意に首を振った。
「由樹?」
「あ……の、触ら、ないで」
さらりと流れる髪に促され、手をそっと引き剥がす。もっと撫でていたいと思ったけれど、今はそれよりも拒絶されたことで胸が痛い。
戸惑いがちに瞳を揺らし、触れるのは駄目だろうかと彼を見る。見つめる先で、由樹は顔を赤らめたまま、わずかに顔を上げた。
目はまだ合わせられないらしく、宙をさ迷っている。
「あ……と、嫌だったか?」
これに由樹は弾かれたように顔を上げるものの、すぐに目を伏せると、ふるふると左右に首を振る。
大きく息を吸い込みながら、全身に緊張をみなぎらせて口を開いた。
「こ、まるから……嫌、じゃないけど、困る」
「嫌じゃない?」
「ない。……でも、こ、困る」
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