我が儘な食卓
書籍紹介
ドルチェよりも甘熱い──昔の男
編集者の槇は、昔の恋人芳沢に12年ぶりに再会する。彼は立派なシェフになっていたが、振られた恨みか言葉に棘がある。つい口論になり、押し倒され一方的にイかされてしまう。「相変わらず淫乱。滲み出してんじゃねえか」昔と違う抱き慣れた手つき。確実に性感を擽る舌先。別れた後、誰が彼の下で啼いたのだろう? 喘ぎながら彼の相手に嫉妬する自分に気付く。だが別れた相手に今更縋れない。諦めようとするが、彼のパトロンが現れて…!? 食通好みのまったりコクある復活愛
立ち読み
ほんの少し前、目の前でリゾットを平らげていたくちびるに、濡れきったものが飲み込まれていく。それを見ただけでいきそうだ。
乱れる姿を嘲笑う男の髪をきつく掴み、弓なりにのけぞった。
はしたなく濡れる自分に対して、芳沢はひどく冷静だ。それが嫌だった。一方的に感じさせられるのには慣れていないし、そもそも相手に熱意のかけらも感じられないのは嫌いだ。たとえ一瞬の快感だとしても、そのあいだだけは互いに盲目的になったほうがずっと楽しいし、後を引くことがない。
どちらかが冷静であれば、それはもう合意のセックスじゃない。自分の痴態をあますことなく記憶され、胸の裡で愚弄されるのはごめんだ。
――簡単に感じやがって、バカな奴だとでも思っているんだろう。違う、そうじゃない。いくら俺だって、誰でもいいというわけじゃない。
「あぁ……、う…んぁ…あっ、あっ…っ」
彼の口のなかで硬さを増していく自分が、どうしようもなく思えた。ここまで感じてしまったら、節操なしだと罵られてもしょうがない。そんな胸中を知ってか知らずか、男の舌はますます淫らにうごめき、槇を苦しめる。
涙が滲み、灯りを絞った天井が揺れて見えた。ここは芳沢の店だ。大切にしている店のキッチンで自分を抱くなんて、なにを考えているのだろう。
乱れる姿を嘲笑う男の髪をきつく掴み、弓なりにのけぞった。
はしたなく濡れる自分に対して、芳沢はひどく冷静だ。それが嫌だった。一方的に感じさせられるのには慣れていないし、そもそも相手に熱意のかけらも感じられないのは嫌いだ。たとえ一瞬の快感だとしても、そのあいだだけは互いに盲目的になったほうがずっと楽しいし、後を引くことがない。
どちらかが冷静であれば、それはもう合意のセックスじゃない。自分の痴態をあますことなく記憶され、胸の裡で愚弄されるのはごめんだ。
――簡単に感じやがって、バカな奴だとでも思っているんだろう。違う、そうじゃない。いくら俺だって、誰でもいいというわけじゃない。
「あぁ……、う…んぁ…あっ、あっ…っ」
彼の口のなかで硬さを増していく自分が、どうしようもなく思えた。ここまで感じてしまったら、節操なしだと罵られてもしょうがない。そんな胸中を知ってか知らずか、男の舌はますます淫らにうごめき、槇を苦しめる。
涙が滲み、灯りを絞った天井が揺れて見えた。ここは芳沢の店だ。大切にしている店のキッチンで自分を抱くなんて、なにを考えているのだろう。
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