華やかな野望の果てに
書籍紹介
あなたを守るためだけに──俺は、ここにいる。
美貌のエリート・孝彦のボディガード兼秘書となった日下部は、彼の裏の顔を見てしまう。それは──華奢な身体に残された、緊縛の痕。愛人の子である孝彦は、腹違いの兄のために、男娼まがいの仕事をしていたのだ。気丈に耐える孝彦だが、次第に日下部には心を許し、甘えてくる。「あなただけは、信じてます」熱く潤んだ眼差しで見つめてくる孝彦に、日下部は激しい恋情を抑えきれなかった。助け出したい。日下部は激情のまま、ある決断をするが…。
立ち読み
「専務……」
華奢な肩が、嗚咽を堪えて俺の胸で震えている。その震えを止めてやりたくて、俺は両手で彼の肩を押さえ込もうとし――気づけば俺の手は彼の肩を滑り降り、その背をしっかりと抱き寄せてしまっていた。
「………っ」
胸の中で孝彦が、びく、と身体を震わせたのに、俺は自分の無意識の行動を気づかされ、慌てて彼の背から腕を解いた。
「…すみません…」
「……いや…」
孝彦は俯いたまま、俺から身体を離した。涙の雫が煌きながらぽたぽたと敷布へと落ちていくのを、俺は呆然と見つめていた。
「……悪かった」
酷く掠れた声がした、と同時に孝彦が顔を上げた。
「……っ」
睫に涙の雫を湛え、俺をじっと見上げた孝彦が、無理にまた笑ってみせる。再び盛り上がってきてしまった涙を堪えようと孝彦が俯き、再び、
「悪かった」
と告げたとき、俺は思わず彼の背を力一杯抱き締めてしまっていた。
「………日下部さん…」
くぐもった孝彦の声が胸の中で聞こえ、また俺のシャツの胸に彼の熱い涙が染み込んでいく。
「専務……」
華奢な肩が、嗚咽を堪えて俺の胸で震えている。その震えを止めてやりたくて、俺は両手で彼の肩を押さえ込もうとし――気づけば俺の手は彼の肩を滑り降り、その背をしっかりと抱き寄せてしまっていた。
「………っ」
胸の中で孝彦が、びく、と身体を震わせたのに、俺は自分の無意識の行動を気づかされ、慌てて彼の背から腕を解いた。
「…すみません…」
「……いや…」
孝彦は俯いたまま、俺から身体を離した。涙の雫が煌きながらぽたぽたと敷布へと落ちていくのを、俺は呆然と見つめていた。
「……悪かった」
酷く掠れた声がした、と同時に孝彦が顔を上げた。
「……っ」
睫に涙の雫を湛え、俺をじっと見上げた孝彦が、無理にまた笑ってみせる。再び盛り上がってきてしまった涙を堪えようと孝彦が俯き、再び、
「悪かった」
と告げたとき、俺は思わず彼の背を力一杯抱き締めてしまっていた。
「………日下部さん…」
くぐもった孝彦の声が胸の中で聞こえ、また俺のシャツの胸に彼の熱い涙が染み込んでいく。
「専務……」
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