アメジストの瞳に囚われて
書籍紹介
私を忘れないよう、契約のくちづけをしよう
幼い頃から、ずっと慎の心を掴んで離さない男──フランツ・エールスベルク。ミュージカル界の天才と呼ばれる彼が来日した際、慎はわざと酒をこぼし気を引こうとする。が、それをフランツに見破られ、逆に弄ばれてしまう。「いい声だな。もっと啼かせたくなる」強烈な快感と屈辱を与えた男に、慎は約束する。役者としてのぼりつめ、絶対に自分の力を認めさせてやる、と。すべてはあの傲慢な、けれどもどこまでも魅了してやまないフランツの傍にありたいがために──。
立ち読み
「──なんでもありません」
立ち上がろうとすると、服のどこかにたまっていたブランデーが零れ落ちてフランツの頬を濡らす。
「も、申し訳ありませ、ん──」
慌てて慎が謝るよりも早く、フランツは長い指を伸ばして滴を掬い取り、ぺろりと伸ばした舌でそれを嘗めた。
フランツがしたのは、たったそれだけのことだ。だが、彼の舌の動きは、強烈な誘惑となって慎の下肢を刺激してくる。
瞬間、かっと頬が熱くなる。あっと思う間もなく、下肢が熱くなる。自分でも驚くほどの変化に、慎は全身を震わせた。
「──どうした?」
ちらりと切れ長の瞳が慎に向けられる。揺れるほどに長い睫毛の醸し出す艶に、背筋がぞくりと震えた。
「失礼いたしました。お客さまに滴をとばしてしまったようです。スーツを濡らしていませんか」
「濡らす? いや、違うさ。美味い酒を飲ませてもらった」
不意に視界が遮られたかと思うと、慎のすぐ目の前にフランツは立ち上がっていた。
一九〇センチ近い長身であることは、十分知っていたつもりだった。しかしいざ実際その身長を目の前にしてみると、感嘆の息を漏らしたくなる。
形容するなれば『すらりとした長身』。紅潮する頬を隠す術もなく、慎はただ呆然とまさに目と鼻の先にある男の整った貌を見つめることしかできずにいた。
それをさも当然と思っていたのか、フランツは口角に微かな笑みを刻んだのち、ゆらりと立ち上がる。
立ち上がろうとすると、服のどこかにたまっていたブランデーが零れ落ちてフランツの頬を濡らす。
「も、申し訳ありませ、ん──」
慌てて慎が謝るよりも早く、フランツは長い指を伸ばして滴を掬い取り、ぺろりと伸ばした舌でそれを嘗めた。
フランツがしたのは、たったそれだけのことだ。だが、彼の舌の動きは、強烈な誘惑となって慎の下肢を刺激してくる。
瞬間、かっと頬が熱くなる。あっと思う間もなく、下肢が熱くなる。自分でも驚くほどの変化に、慎は全身を震わせた。
「──どうした?」
ちらりと切れ長の瞳が慎に向けられる。揺れるほどに長い睫毛の醸し出す艶に、背筋がぞくりと震えた。
「失礼いたしました。お客さまに滴をとばしてしまったようです。スーツを濡らしていませんか」
「濡らす? いや、違うさ。美味い酒を飲ませてもらった」
不意に視界が遮られたかと思うと、慎のすぐ目の前にフランツは立ち上がっていた。
一九〇センチ近い長身であることは、十分知っていたつもりだった。しかしいざ実際その身長を目の前にしてみると、感嘆の息を漏らしたくなる。
形容するなれば『すらりとした長身』。紅潮する頬を隠す術もなく、慎はただ呆然とまさに目と鼻の先にある男の整った貌を見つめることしかできずにいた。
それをさも当然と思っていたのか、フランツは口角に微かな笑みを刻んだのち、ゆらりと立ち上がる。
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