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泥舟

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書籍紹介

 ねぇ。“お願い”聞いてくれたら、僕の中でいかせてあげる──。

 玄佳は、正善のかつての裏切りを許せずにいた。だが今、玄佳は長年無視してきた正善に甘え、恋人として愛されている。それは、復讐を遂げようとする玄佳の捨て身の策略だった。「お願い」の一言で正善を縛り跨がって弄ぶ玄佳の胸中には、復讐の愉悦しかない。それなのに正善は決して拒絶せず、すべてを受け入れる。まるで、それが悦びであるかのように。その献身に玄佳は──。
立ち読み
 「……僕の前では、誰からの電話にも絶対に出ないで」
 唇を離すや、絶句している正善をひたと見詰める。初めて味わった柔らかな感触を舌先で舐め取り、頭の奥底に押し込みながら。
「お願い。……聞いてくれるよね?」
「…あ、あ…、勿論だ、玄佳…」
 何かに操られるかのように頷いた正善の頭上で、着信音はしつこく鳴り続けている。玄佳は伸びをして携帯電話を掴むと、正善にかざしてみせた。玄佳が何か言う前に、正善は画面をタップし、応答を拒否する。
 ようやく着信音がやむと、小賢しい美澄の口も塞いでやれたようで愉快だった。くすくす笑っているうちに、玄佳は股間のあたりに熱いものが当たっていることに気付く。
「正善……?」
「…すっ、すまない、玄佳……っ!」
 他意も無く問いかけただけだったのに、正善はばっと玄佳を解放し、ベッドの端まで転がって行ってしまう。恥じ入るようにこちらに背を向けた姿のおかげで、玄佳も遅ればせながら理解した。さっきの熱は、正善の欲望だったのだと。
「…ねえ、正善。どうして離れちゃうの? こっち向いてよ」
 同じ男の欲望の対象にされるなんて──しかもそれが正善だなんて、気色悪くてたまらないはずなのに、自分でも驚くほど甘ったるい声が出た。
 正善が自分を愛していると元々知っていたから? いいや、それだけではない。美澄にも正則にも…正善以外の誰にも一顧だにされなかったこの身体が、当の正善に劣情を催させていると思うだけで、玄佳の心も昂っていく。
「…い、今は…許してくれ、玄佳…こんな姿、お前には、とても…」
 弱々しい応えに、嗜虐めいた感情が掻きたてられる。生まれてこのかた、誰とも付き合ったことの無い玄佳よりは経験もあるだろうに、この初心な反応は何なのだろうか。
 嬲ってやりたい。辱めてやりたい。こんな感情が自分の中にあったなんて、今まで知らなかった。
「さっきまで、ぎゅってしてくれてたじゃない。なのにどうして、いきなりそんなこと言うの? ……僕のこと、もう嫌になった?」
「馬鹿な…っ! 嫌になんて、なるわけがないだろう。こ、これはただ…」
「ただ、なあに? どこか痛いの?」
 どこまでも無垢を装う玄佳に、正善は無抵抗のまま追い詰められていく。
 美澄あたりなら、いい歳して純情ぶるなと顰め面をしただろう。当然、玄佳だって童貞でも自慰くらいするし、男の生理現象も理解している。
 けれど、八年間無視され続けた正善の中で、玄佳は未だ十六歳の少年のままなのだ。もしかしたら、もっと幼い子どもなのかもしれない。それこそ、性欲をぶつけるのに躊躇せざるを得ないような。
 愚かとしか言いようが無い。子どもは、分別をわきまえた大人などよりも、よほど残酷になれる存在なのに。
「ねえ……正善。こっち向いてよ。……お願い」
 そろそろとどめを刺してやることにして、決定的な一言を叩き付ける。こんなお願いでさえ、正善は拒まない。観念したように息を詰め、こちら側へ寝返りを打つ。
「痛いのは、ここ?」
「…う…っ…!」
 にじり寄ってコートの前を開け、ズボンの上から股間をやんわり握り込んでやると、きつく引き結ばれていた唇から呻きが漏れた。苦痛ではなく、快感のそれであることは、更に熱と硬度を増した雄からも明らかだ。
「すごい…、熱い…」
 口を突いた素直な感想は、初心な男の本能をますます駆り立てたようだった。ぐぅっと苦しげに喉を鳴らした正善が、無邪気なふりで容赦無く股間を弄り回す玄佳の手を捕まえる。
「駄目…だ、玄佳…やめてくれ…」
「なんで? 正善のここ、すごく熱くてつらそうだから、さすってあげてるだけなのに。どうしてやめなくちゃならないの?」
 ……本気でやめさせたいなら、僕の手なんて捻じり上げちゃえばいいのに。出来ないんでしょ?
 嘲りを胸に秘め、玄佳は布越しに正善の雄をぎゅちぎゅちと揉み込む。
 正善の手にはほとんど力が入っていないから、いたぶってやるのに何の支障も無い。盗み見た端整な顔は口先とは裏腹の快感に染まっていて、芽生えたばかりの嗜虐心を煽られる。
 ……本当は、もっと強くしてもらいたいんじゃないの? ズボンの中でみっともなくお漏らししちゃうくらい、強く……!
「あ…っ…、あ、…玄佳、だ…め…だっ、…っ!」
「…んっ…、う…!?」
 夢中になって扱き立てているうちに、布地の奥で、どくんと何かが弾けた。じわじわとズボンを通って染み出てきたものが、玄佳の指先を湿らせる。
 微かな雄の匂いを嗅ぐまでもなく、放心しきった…だがどこか艶めいた正善の表情を目の当たりにしただけで、玄佳は確信した。
 ……本当に、いったのだ。玄佳が面白半分に弄っただけで、呆気無く……。
 この身が確かに男の欲望の対象になっているのだという確かな証を見せ付けられ、湧き上がってきたのは、嫌悪ばかりではなかった。
 ちら、と見遣れば、視線に気付いたかのように、沈黙していた携帯電話が再び美澄からの着信を告げる。よほど仕事が溜まっているのか、それとも玄佳から引き離したいのか。きっと両方だろう。
 けれど今度は、正善は着信音に反応すらしない。じょじょに理性を取り戻しつつある黒い双眸には、玄佳だけが映し出されている。
「…す、まな、い、玄佳」
 正善は、わかっているのだろうか。絶望にひび割れたその声に、隠し切れない欲情が滲んでいることを。
「お前の…、清らかな手を…、汚してしまった…。すまない…、何でもするから許してくれ…っ…!」
 しかも、ことここに至って、最も気にかけるのはそこなのだ。着衣のまま、拙い手淫だけでいかされてしまった羞恥心より、玄佳に嫌われ、また無視されてしまう恐怖の方がずっと強いのだ。
 なんて…、なんて、なんて扱いやすくて、突き落とし甲斐のある男なんだろう……!
 ふつふつと血が滾る身体の奥で、どろり、どろりと何かがうごめく。泥だ、と即座に閃いた。父を奪われ、正善に裏切られ、美澄や正則たちに虐げられ続けたせいで、溜まりに溜まった憎悪の汚泥だ。
 そうだ。あれで舟を作ろう。偽りの愛情に塗り固められた、見た目だけは美しい舟に、正善は喜んで乗り込んでくれるだろう。
 でも、泥舟は泥舟だ。もう引き返せないところまで漕ぎ進めばぐずぐずに崩れ、乗り手もろとも沈む運命にある。絶望という名の淵に。
 携帯電話の着信音が、根負けしたように途切れた。高揚していく心のまま、玄佳は告げる。
「…駄目。許さない」
「玄佳っ…」
「僕の前で全部脱いで…ここを見せて、どうしてこうなったのか教えてくれなきゃ、許さない」
 
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