PARTNER 籠の中の二羽の鳥

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本価格:682(税込)

  • 本販売日:
    2016/02/10
    電子書籍販売日:
    2016/03/11
    ISBN:
    978-4-8296-2607-8
書籍紹介

 今日から俺は“彼の特別”になる。

 英才教育でエリートを輩出し、その名を馳せる全寮制高校皇学院。父親の逆鱗(ルビ:げきりん)に触れ、やむなくそこへ入学させられた阿久津琳は、そのあまりに特殊な世界に唖然とした。最たるものは、毎年四月、苦手科目を補い合えるパートナーを選び、どちらかが及第できなければ共に放校という一蓮托生の制度。この最大の難局で、琳が選び、同時に琳を選んだ相手とは……!?
立ち読み
  囁くように問うと、彩羽の瞳が光を反射してゆらりと美しく揺らいだ。
「俺が琳とパートナーになりたいと思ったのは、琳が他の誰ともちがったからだ。あの場所でゆっくりしていると、身体じゅうに血が巡って、心が澄んでいく。咄嗟に光合成だと言ったが、そのまま受け入れてくれたのは琳が初めてだった。琳はずかずかと無遠慮に近づいてくるようで、肝心なときは気遣ってくれるし、口下手な俺の話をちゃんと聞いてくれて、俺のために怒ってもくれる。そんな琳だから、俺は──最初に会った日から、どれだけたくさんのひとがいるなかでも、おまえだけはすぐに見つけられたんだ」
「……彩羽」
 これ以上の言葉はない。身体じゅうから嬉しさが込み上げ、心臓は早鐘のごとく脈打ち始める。
 手のひらは汗でびっしょりだ。
「だから、俺も琳のことを好──」
 彩羽の口からちゃんと答えを聞きたかったのに、何度も唇を舐める様を見ていると我慢できなくなり、塞いでしまった。
 琳自身の唇で。
 さっきの子どもっぽいキスではなく、初めから深く口づける。腹の底から込み上げてくる情動を制御することなど不可能だった。
 背中に回した手で彩羽の身体を弄る。衣服の上からなのがもどかしくて、キスを続ける傍ら、シャツを引っ張り上げてスラックスから抜いた。
「待っ……ぁ」
 肩を押されるが、止められるわけがない。昂揚に胸を大きく喘がせながら、一心に身体を密着させる。
 後退りする彩羽をベッドへ追い詰め、そのまま押し倒した。
 相手が彩羽だというだけで、初体験のときより、その後のどのときより昂奮する。自分で自分が滑稽に思えるほどだ。
「彩羽」
 懸命に自制心を掻き集めてなんとか唇を解いた琳は、上から彩羽を見下ろし、上擦る声で名前を呼んだ。
「ごめん。触りたい。厭なら、いま言ってくれ」
 どうか厭がるなと双眸に込める。
 ほんの数秒が一時間にも感じられた。
「俺も、触りたい」
 やっと望む答えが聞けて、貪る勢いで彩羽に触れる。一刻一秒を惜しんでシャツの釦を外し、パンツの前をくつろげると、呆れるほど琳の中心は硬くなっていた。
 彩羽が目をそらしたのもしようがない。
 それでも拒絶の言葉が発せられないのをいいことに、赤らんだ首筋に舌を這わせる。
「お、俺も、脱ぐから、少しだけ待ってくれ」
 彩羽がたどたどしい手つきで自身のシャツの釦に指をかける。それだけのことにも昂奮は増し、待ちきれずに琳自身の手で裸に剥いてしまった。
 頭をもたげている彩羽のものに、躊躇なく手を伸ばす。
「あ……琳っ」
 普段より熱い肌、甘い吐息、掠れた声。彩羽のすべてが琳を煽る。
 肌を密着させ、自身を彩羽に擦りつけると、両手で握り込んだ。
 脳天が痺れるような感覚に、理性が焼き切れる。
「琳……あ、あ……うぅ」
「彩羽っ」 
 激しい愉悦に逆らうことは難しく、本能に任せて彩羽の中心に自分のものを擦りつけた。
 そこから濡れた音が立ち始めるのに時間はかからない。いやらしく響く音に、彩羽は身体じゅうを赤く染める。
 解放しないことには、このまま暴走してしまいそうだった。
「うぁ……り、ん……も、駄目だ」
 彩羽が終わりを訴えてくる。
「俺も、もう駄目」
 琳はそう答えると、いっそう手の動きを速める。
 極みの瞬間はほぼ同時だった。口づけで互いの声を塞ぎ、思う様吐き出す。びくびくと跳ねる彩羽への愛しさが、抱き合ったことで増したのを実感していた。
 とろりとしたまなざしで見つめられると、またすぐに欲望が込み上げてきそうになり、必死の思いで身体を離す。
 三十分という約束をたがえてしまえば、スタートから自分でケチをつけてしまうはめになる。腹を括った以上、中途半端な真似はしたくなかった。
 名残惜しさも手伝って丁寧に後始末をしつつ、琳は静かに告げた。
「死ぬほど努力して、必ず進級する。見ててくれ」
 手のひらに口づけると、彩羽がほほ笑む。
「ああ。琳だけを見ている」
 誓いのようなその言葉とあまりに綺麗な彩羽の笑顔を間近にして、胸の奥が掻き乱された。
 タイムリミットまでまだ二、三分あったが、これ以上傍にいたら離れられなくなってしまう。身支度を整えた琳は、最後に彩羽の額にもう一度だけ口づけて、ふたりで過ごした部屋を出た。
 ドアを背に息をついたあとは、振り返らずに自分のいるべき場所へ向かう。
「こうなったら、トップを狙ってやる」
 どうせなら進級ラインを目指すなんてことはせず、トップをとるつもりでやろう。
 彩羽に見ていると言われた以上、格好悪い真似はできない。
 琳はこぶしに決意を込め、ぐっと握り締めた。
 
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