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愛のコロッケパン ~恋する商店街~

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書籍紹介

 愛情たっぷりのコロッケとパンは、俺たちみたいにベストマッチ

 合作コロッケパンが名物のベーカリーと精肉店、それぞれの店の看板息子・麦と陽介は幼馴染みだ。父が急逝した陽介はホストをして稼ぎ店を再開させたが、麦は、弟のように思う彼がなんだか知らない男になったようで、少し複雑な気持ちだった。それでも、子供の頃と変わらぬ距離で陽介が傍にいて嬉しい。スキンシップと甘い台詞には、麦も「さすが元ホスト」と笑っていたけれど!?
立ち読み
 「よし、じゃあ飯にするか」
「あー、腹減った。はやく食お」
 互いにテーブルに着くと、麦は全粒粉の食パン、陽介はライ麦パンを手に取り、密閉容器で持参してきた千切りキャベツを乗せた。
 その上に、揚げたてのコロッケを置き、ソースをかけたらこまどり町商店街名物でもある「コロッケパン」の完成だ。
 この「名物」は六年ほど前に一度、こまどり町商店街から姿を消していた。
 一度は消えた名物が再び食べられたことで、ほかに浮気する気が起きない、というのは蕎麦屋の三船さんの弁だ。
 消えた原因は、長く「NAGAMORI」と隣り合わせで営業していた「肉の赤城」が六年程前、廃業してしまったことにほかならない。しかし去年、そこの跡取り息子が商店街に帰ってきたことによって営業再開、そしてコロッケパンは無事、こまどり町名物として返り咲いたのだ。
 ソースをかけると、出来立てのコロッケが、しゅわ、と微かな音を立てたような気がした。ソースの甘い濃い香りが湯気と共に立ち上り、反射で、麦はこくんと唾を飲み込む。
「はい完成。……俺と麦の愛のコロッケパン」
「いただきまーす」
「麦、聞いてる!?」
 猫舌気味の麦はかぶりつくことが難しいので、箸で一旦パンの上のコロッケを崩した。湯気と一緒に、コロッケとソースの匂いがふわんと漂ってくる。キャベツの千切りにコロッケを馴染ませると、熱が通って生のときよりも鮮やかな緑になった。
 まだ熱そうだと息を吹きかけながら警戒しつつ、一口食む。
 潰したジャガイモの滑らかさと、崩してもまだ残る衣の歯触り、絡むソースの濃さはキャベツとパン、そして揚げたてコロッケの甘味に程よく混じりあって、口腔に広がっていく。
 陽介の作るコロッケは、昔ながらの芋コロッケだ。皮付きのままふかして、皮ごと潰す。そのおかげで、柔らかな甘みとしっかりとした芋の風味、コクが感じられるのだ。細かな皮が触感にアクセントを加えており、飽きのこない定番の味である。
 コロッケパンとしてだけではなく、当然単品としても人気があって、連日完売御礼の商品でもあった。金のない男子高校生などは、パンは買わず、コロッケだけ三つも四つも買って行って部活帰りの空腹を満たす子もいる。
「あ、つ」
 まだ若干熱かったので、はふ、と息を逃しながらも、なんとか咀嚼して麦はコロッケパンを飲み込んだ。
「うん、うまい」
 毎日変わり映えのしない感想を漏らすと、対面の陽介が頬を緩ませる。
「ほぼ毎日食べてるんだけど……意外とこれが飽きないんだよな、不思議なことに」
 陽介が精肉店の営業を始めてから暫くして、夕食は二人でとるようになった。以来ずっとコロッケパンを食べ続けているのだが、たまには別のメニューを、とはどちらも言いださない。
 営業時間はパン屋が朝八時から夜の八時まで、精肉店が午後三時から午後十時までと時間は多少ずれるのだが、麦は閉店作業をしながら陽介の仕事が終わるのを待ち、陽介は食事後に閉店作業をする、という流れに今はなっている。
 もぐもぐと口を動かしていると、陽介が対面から手を伸ばし、麦の口元に触れた。
「麦、ソースついてる」
 唇の横に付いたソースを指で拭い、陽介がそれを舐める。子供のような自分を恥じつつも、陽介の動作をじっと見つめ、麦は感嘆の意を込めて息を吐いた。
「そういうのも、ホスト向きなのかなぁ」
 褒めたつもりだったが、陽介が思いがけないことを言われたとばかりに固まる。陽介は子供に諭すような口調で「あのね」と言った。
「……いくらなんでも、麦以外にはここまでしないからな?」
「そりゃそうだろ。それ他の人にやったら誤解されるべ」
 幼馴染み間の癖だからセーフなだけであることは、麦にもわかる。これは自分と陽介だから有効なのだ。
 そう告げれば、陽介は美形が台無しになるような残念な顔をした。
「……まあ、そうだね。うん。俺も食べよう。頂きます!」
 陽介が大きく口を開け、一口齧る。
 揚げたてのコロッケのサクサクという音が、実に美味そうに聞こえてきた。
「んー、うまい」
 しみじみと言うのに、麦は小さく笑った。陽介はまたすぐに、二口目に入る。もふもふとパンを食べながら頷く。
「俺と麦の愛情が込められてるんだから、まずいわけがない」
 当然、と臆面もなく言いながら、陽介が最後の一口を放り込む。あっという間にひとつ完食だ。
「でも今陽介が食ってたライ麦パンの仕込みは父さんだけど」
「そういう細かいことはいいの。とりあえずこれは麦の愛と俺の愛の産物なの」
「……そう言われるとなんか食欲なくすな」
 麦の返答に、陽介が「ひでー!」と情けない声を上げる。
「お前さ、よくそういうこと言えるよね。さっきだっておばちゃん相手に」
「そりゃ、お客さん相手っていうのは『商売』だし。それでなくても、俺は女性相手だったらそれがどんな容姿だろうとさっきみたいなこと言えるよ」
 けろりと返ってきた言葉に、麦は顔を歪めた。
「陽介、ほんっとホスト向きというかジゴロ向きというか……」
「ジゴロって。……そうじゃなくて、俺には皆同じってこと。美女だろうが、しわしわのおばあちゃんだろうが、同じ括りなの」
 流石にそれは枯れ過ぎちゃいないかと、却って不安になる。大丈夫かとうかがえば、陽介は頬を掻いた。
「だから、『特別な人』以外には平等ってこと。俺は」
「特別な人」
 繰り返し言った瞬間に、妙に胸がざわついた。麦はまともに女の子と付き合ったためしがない。なんだか陽介との差を知るようで、複雑な気分だ。対面の陽介が、こちらを見ながらにやにやしている。
「──気になる?」
「別に」
 なんだか揶揄されているようで、正直に知りたいと言うのも悔しくて、麦はぼそぼそとそんな風に返した。そう? と余裕の表情で陽介が首を傾げる。
「麦になら教えるけど」
 
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