愛を売る男
書籍紹介
おまえは、俺の嫁だ。いいな?
ナンバーワンホストの泰巳は、足繁く通い口説いてくる一心会の会頭・栃沢とキスをする。泰巳唯一の財産である美貌を気に入り、大金を払ってくれるのだから、恋愛ゲームを楽しませているのだ。ところが抗争に巻き込まれ、泰巳は顔に傷を負ってしまう。絶望し自失する泰巳を、栃沢は自宅へ連れ帰り甲斐甲斐しく世話をする。美貌に傷がついた泰巳は無価値な人間でしかないのに、なぜ……?短編『愛を乞う男』と書き下ろし短編も収録の完全版!
立ち読み
「ここにいる理由がないっていうなら、俺の嫁にでもなるか?」
「……は?」
泰巳は、ぱちりと目を瞬いた。
栃沢は、いったい何を言いだすのだろう。
「そうしたら、家族だから面倒見る理由になるだろ」
「嫁って……。俺、男だけど」
そういう問題じゃないと思いつつも、あまりにも意表を突かれてしまい、まともに反論できない。どうでもいい枝葉に、突っこみを入れてしまう。
「関係ねぇよ」
「……っ」
栃沢は、泰巳の顎を掴んだ。
そして、上を向かせる。
視線がぶつかった。強い光を放つ黒い瞳が、じっと泰巳を見下ろしていた。
「……今すぐここで、それを思い知らせてやる。男だとか女だとか、そういうのはもうずっと前から、俺には関係ねぇんだよ」
「……あ……っ」
腰を抱かれて、そのままキスされる。熱っぽいキスだった。
思わず、溺れてしまいそうになる。体温が高くなり、まるで微熱に浮かされた時のように、体から力が抜けた。
膝が崩れ落ちかける。
下半身から力が抜けようとする隙を、栃沢は見逃さなかった。彼はそのまま、泰巳を両腕に抱え上げたのだ。
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