可愛い弟のつくりかた

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本価格:682(税込)

書籍紹介

 泣きながら、俺のところにおいで。

義兄の万貴は眉目秀麗、文武両道でまさに完璧。洸は万貴に少しでも近づきたくて、彼が通った高校で彼が務めたテニス部の部長と生徒会長を務めている。一生懸命な洸を、万貴は笑顔で見守ってくれる。なのに万貴が親友を家に招く度、“俺の”お兄ちゃんなのにと、洸の嫉妬心と独占欲は募っていく。そんな時、今まで知ることのなかった、万貴の酷くて甘い本音を知って……!?
立ち読み
 「やだ……他の人のこと好きって言わないで」
 万貴が杉井を親友と言うたび、好きだというたび、洸は胸の中を鋭い刃物でぐちゃぐちゃに切り刻まれるような気分を味わう。
 自覚すれば痛いだけだとわかっていたから目を背けていたのに、その痛みを洸はもう無視できない。耐えられない。
「なら洸も俺以外の男の名前を呼んだりしたら駄目だよ」
 そう言われて、洸は驚いた。
 そんな言い方をしたら、まるで万貴が杉井に嫉妬しているみたいじゃないかと思ってしまう。
 そう思って、背筋が震えた。怖いのとも違う震えだった。
「俺と、しょ……あの人は、違う?」
「違うよ」
「どういうふうに、違うの?」
「杉井はよその家の飼い犬」
「……俺は?」
 訊ねた洸に、万貴がにっこりと笑う。
「俺の犬」
「……」
 嬉しくて、嬉しくて、洸は自分が本当に犬だったら、きっと今はち切れそうにしっぽを振っているだろうと思った。
 どこに力を入れても止まらなかった涙が少しだけ収まって、でもびしょ濡れの顔のまま洸は笑う。
「でも、俺は、小猿だったんじゃないの」
「小猿だったな。汚くてみすぼらしくて、全身で構われたいって叫んでる可哀想なお猿さんだった」
 出会った頃の自分の『みすぼらしさ』を思い出し、またその頃に戻ってしまったように恥ずかしくて、洸はまた万貴から顔を隠したくなった。
 だが万貴は今度は両手で洸の頬を挟むようにしてきて、それが叶わない。
「でも、一生懸命俺を見て、俺の真似する洸は、本当に可愛かったよ。今も可愛い。だから俺だって、ちゃんと洸のお兄ちゃんになろうと思って頑張ってたのに」
「え……?」
 
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