ラスト

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本価格:649(税込)

  • 本販売日:
    2013/12/10
    ISBN:
    978-4-8296-2565-1
書籍紹介

真人は僕の天使!
たまらない、たまらないよ……!

脱出ゲームのテストプレイヤーとなった真人は、妙に親しげな見知らぬ男と元同級生二人と共に、残虐な体験プレイを強いられる。楽しげに二人を嬲り始めた男。彼はかつて二人に虐められ退学してしまった友人・空閑だった。復讐の機会だと言う空閑を、真人は止めようとする。すると空閑は涙ながらに愛を告白しつつも、彼等を助ける代わりとして淫靡な“お願い"をしてきて……。 

立ち読み

「僕、真人が好きなんだって、さっき言ったよね。……あれ? 違うか、ちゃんと告白したわけじゃないか。何やってるんだ僕は、馬鹿馬鹿馬鹿」
自分の頭を何度も叩いて自己完結した空閑は、こほんと咳払いをし、表情を引き締めた。鮮やかな変化に、真人は目を奪われる。この男がほんの数年前まで感情を失っていたなんて、一体誰が信じるだろう。
「じゃあ、もう一度言わせてもらうね。…真人、僕は真人が好きです。僕如きがおこがましいとは思うけど、愛してます。ぶっちゃけ、二十四時間三百六十五日、真人のことしか頭にありません。真人は僕の天使です。いや、神です。真人のためなら僕は何でもやれます。下僕と書いて賢輝と読んで下さい」
「…………」
「…あっ、すみません! ごめんなさい! 厚かましいブタでごめんなさい! 今のは名前呼びして欲しいってわけじゃなくて、ただの比喩っていうか…いやそりゃ勿論呼んでくれるなら空飛べちゃうくらい嬉しいけど…」
ただ立て板に水の如く並べ立てられる熱烈な告白に圧倒されていただけなのだが、空閑は真人の手を胸に抱き込み、ぺこぺこと頭を下げた。普通の男がやれば卑屈で滑稽にしかならない仕草も、空閑ほどの美形がやれば様になってしまう。
「あの、その、あの…とにかく、僕は真人が好きなんだ。真人は昔よりもずっと格好良くなってて、可愛い彼女なんかも出来ただろうし、僕なんて迷惑でしかないだろうけど…それでも、好きなんだよ。だから、真人が欲しい。真人から、僕に触れて欲しい…」
耳朶まで真っ赤に染めた空閑は、図体こそ大きすぎるが、まるで恋する乙女のようで、真人を激しく戸惑わせた。高らかに笑いながら無慈悲に藤本たちを痛め付けていた空閑と今の空閑とでは全くの別人だ。でっぷり太った無口な空閑が、華やかな容姿の饒舌な男に変身しただけでも混乱してしまうのに。
「僕はあいつらが憎いよ。本気で現実のライフゲージを今すぐゼロにしてやりたい。…でも、真人があんな奴らでも死なせたくないって言うなら…」
「…言う、なら?」
ごくんと唾を飲んで促すと、空閑は真剣な表情で続ける。
「僕は、我慢するよ。…ねえ真人、気付いてる? あいつらの生殺与奪を握ってるのは、真人なんだよ。真人が僕のお願いを聞いてくれて、僕を構ってくれれば、僕は他の何も考えられなくなっちゃうんだから…、…っ」
そこで空閑は、耐え兼ねたようにぐすっと小さく啜り上げた。鼻を萎ませては膨らませたり、頬を震わせないようにしたりと、何とか堪えようとするが失敗し、とうとう嗚咽し始める。
「ごめんね、ごめんね、ごめんなさい。こんなの卑怯だよね。脅迫だよね。わかってるんだ。でも、こうでもしなくちゃ真人は僕なんて相手にしてくれない。こんなチャンス、みすみす逃せない」
「空閑……」
「好き、好き、好き…好きだよう、真人ぉ…ごめ、んなさい、好きで…」
わんわんと泣き崩れながら、空閑はそれでも真人の手だけはひしと掴んで放そうとしない。

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