渇仰

本を購入

本価格:628(税込)

  • 本販売日:
    2012/03/10
    ISBN:
    978-4-8296-2525-5
書籍紹介

お前は僕の恋人で、僕の犬だ。

人生のどん底で再会した幼馴染み・達幸は人気俳優となっていた。かつて父の愛情を奪われ、事故で夢を失った明良は、彼と二度と会うことはないと思っていた。しかし達幸は、己の成功は明良の「犬」になるためだと縋り付く。ついには身体まで奪われ屈辱に塗れた明良は、すべてを奪われた自分と同じ苦しみを与えてやろうとするが、達幸は明良の傍にあることだけを求めていて……。

立ち読み

「…すき、あきら…明良だけが、好き」
「達幸、僕は…」
「好き、好き、大好き。俺の明良。俺だけの…、あーちゃん…」
  波のように繰り返される告白が、心の奥底にあるものを揺さぶる。
  これ以上聞かされたら口を突いて出てしまいそうで、明良は素早く達幸の唇を盗んだ。達幸がきょとんとしているうちに膝の上から退こうとするが、浮かびかけた腰を長い腕に引き寄せられ、股間をくっ付けあうように抱き締められてしまう。布地越しにも硬いものを感じ、明良は広い背中を叩いた。明良に関しては羞恥心は皆無で所構わず盛る達幸だ。こんな所でもその気になれば押し倒されかねない。
「達幸っ」
「…大丈夫。これ以上は何もしない。ただ、こうしてるだけだから」
  達幸は明良の肩口に顔を埋め、言葉通りじっとしている。
「でもお前、その…辛くないのか?」
  そんな状態で自分で処理もせずにいるのはさぞかし辛かろう。明良も男だから心配になってしまう。
「平気。いつものことだもの」
「……は?  いつも?」
「明良と一緒に居ると、俺、いつもこんなんだよ。匂いを嗅ぐだけでガチガチになっちゃう。でも、そのたびに抱いたりしたら、明良が壊れちゃうから我慢してるの」
  あれでか。あれでも我慢していたのか。
  衝撃の事実にがくりとなるものの、昨夜と同じ愛しさがこみ上げ、明良はくすくすと笑った。
「馬鹿だな、お前は」
  どん底に突き落とそうとしている人間にそこまで入れ込むなんて、本当に馬鹿としか言いようがない。自分だけに向けられた欲望を心地良く感じてしまう明良も立派な同類だけれど。
「…明良、笑ってる。嬉しい…俺、明良が笑ってくれるなら、何でもする。どれだけだって、我慢してみせる」
  だから誉めて誉めてと頬を擦り寄せる犬の頭を撫でてやれば、前言をころりと忘れて唇を貪ってくる。
  撮影再開の時刻ぎりぎりまで、二人は抱き合い、深い口付けに溺れていた。

おすすめの関連本・電子書籍
アイコンについて
  • プラチナ文庫
  • プラチナ文庫 アリス
  • プラチナ文庫 艶
  • ラピス文庫
  • f-LAPIS
  • プランタンe-Boys!
  • 本あり
  • 電子書籍あり