手錠

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本価格:628(税込)

  • 本販売日:
    2010/10/10
    電子書籍販売日:
    2012/09/07
    ISBN:
    978-4-8296-2492-0
書籍紹介

愛し合うことは許されない。 ただ、繋がるだけ──

救急外科医の松浦は、突然男に攫われる。その男・祐司に連れて行かれた廃ビルの一室には、彼が忠誠を誓う兄貴分の毛利が撃たれて横たわっていた。脅されるままに処置を施した松浦だったが、解放されず、祐司と手錠で繋がれてしまう。繋がれたまま食事をし、風呂に入って眠る――やがて、常に繋がれたその異常な関係を異常と思わない、奇妙な熱がふたりの間に生まれていき……。
立ち読み
「ああ……たまんねぇ……先生……」
  再び唇が重なり、二人は互いの舌を思い切り吸い込む。そして愛を語れない悔しさを埋めるように、何度も絡め合っていた。
  そうしているうちに、松浦の体は限界に達し、静かに飛沫を祐司の腹に飛び散らせる。祐司はそれを指先に取ると、ぺろっと舐めてみせた。
「よせよ……そんな……」
「先生だって飲んでくれるようになっただろ」
  祐司は幸せそうに、最後の瞬間を一気に上り詰めた。
  そのまま二人は抱き合い、優しいキスを何度も味わう。
「盛りがついた猫みてぇだな」
  いきなり頭の上で声がした。みると黒い影になった毛利の頭が見える。倒れてから五日目、ついに毛利は自力で立ち上がったのだ。
「他にすることがないっからって、毎日、毎日、よくやるぜ。先生、あんた、見かけに似合わず好き者だったんだな」
  祐司は慌てて松浦の体を毛布で覆った。その動作を見て、毛利は鼻先で笑う。
「先生を俺が襲うとでも思ったか?  そんな元気なんてねぇよ。祐司、便所に行く。手伝え」
  立ち上がろうとした祐司は、そこで松浦と手錠で繋がっていることに気がついた。それを見て、毛利はさらに笑う。
「何が心配なんだ。逃げる気なら、とうに逃げてるさ。今は、おまえのことが心配で、ここにいるだけだ」
  毛利は鋭い。松浦の心をすでに読んでいたようだ。毛布に隠れて、松浦は毛利を見ないようにした。祐司への思いが、暗闇の中でも見えてしまうような気がして。
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