経験
書籍紹介
心の距離がふたりを隔てる
過去自分を抱くようになってから変わった智也が怖くなった和希は、一方的に別れを告げた。しかし他大学との飲み会で再会し、何もなかったかのような態度の智也に和希は戸惑う。
立ち読み
「以前みたいにがっつかないように、順序立ててオトそうかと思ったけど、やっぱやめだ。俺のガラじゃない」
「三、上……?」
和希の肩口に顔を埋めて、智也はクックッと身体を震わせて笑っていた。笑いながら、密着させた身体の和希の腰から脚の線を、智也のてのひらがジーンズ越しに何度もさする。
ヒッと、和希は短く息を吸いこむ。指の先から身体が冷たくなっていく。暗闇に感じる智也の気配に神経が研ぎ澄まされて、唇が震えた。
何か、怖い残酷なものが自分をつかみ取ろうとしている。
闇の向こう側から、指を伸ばして。
「震えてんの?」
「み、かみ……」
「寒い? それとも、俺が怖い?」
うなじに、智也の冷たい唇が触れた。
男の腕で背中から抱きこまれて、恐怖と絶望に怯える自分は、これから何が起きようとしているのか本当は知っていたんじゃないかと、ずっとあとになってそう思った。
あの海辺の夏の夜、智也に手を引かれて歩いた道の結末をふたりが知っていたように。
「こんなに簡単に、俺のこと家に上げちまって。一度身体の関係持った男の前で、どうしたらそこまで無防備になれるのか教えてもらいたいよ」
「三上……」
「三、上……?」
和希の肩口に顔を埋めて、智也はクックッと身体を震わせて笑っていた。笑いながら、密着させた身体の和希の腰から脚の線を、智也のてのひらがジーンズ越しに何度もさする。
ヒッと、和希は短く息を吸いこむ。指の先から身体が冷たくなっていく。暗闇に感じる智也の気配に神経が研ぎ澄まされて、唇が震えた。
何か、怖い残酷なものが自分をつかみ取ろうとしている。
闇の向こう側から、指を伸ばして。
「震えてんの?」
「み、かみ……」
「寒い? それとも、俺が怖い?」
うなじに、智也の冷たい唇が触れた。
男の腕で背中から抱きこまれて、恐怖と絶望に怯える自分は、これから何が起きようとしているのか本当は知っていたんじゃないかと、ずっとあとになってそう思った。
あの海辺の夏の夜、智也に手を引かれて歩いた道の結末をふたりが知っていたように。
「こんなに簡単に、俺のこと家に上げちまって。一度身体の関係持った男の前で、どうしたらそこまで無防備になれるのか教えてもらいたいよ」
「三上……」
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