まじかる漢の娘
書籍紹介
ピンクゴリラなのに、格好いい……!
世界征服を目論む秘密結社のボスを襲名した光煌は、宿敵であり、初恋の相手である魔女っ子戦隊のピンク・雅と対峙するのが楽しみだった。ところが初対戦の日、現れたのは逞しく成長した体をピンクの衣装に包んだ漢!! 光輝は夢破れ激昂する。そして悪の秘密結社と魔女っ娘戦隊との戦いの火蓋は切られた──はずだが、光輝の企みはことごとく失敗し、その度に雅に宥められて!?
立ち読み
やがて晴れ始めた煙幕の中から姿を現した雅は、光煌の姿を見るなりぎょっとした顔をした。
「……なんだよ」
泣き顔を見られたかと、目元を擦る。それでも悔し涙は溢れて来て、光煌は舌打ちをした。
「ちょ、お前」
「うるさいな。戻せばいいんだろ、戻せば……」
ぐすぐすと泣きながら光煌は立ち上がる。
息を吐き、ケーンを指先で回しながら「GehaufdeinenPlatz」と呟いた。ぬいぐるみに吹き込んだ命は消え、散り散りになっていたそれらがデパートに集まってくる。
磁石に吸い寄せられるように戻ってきたぬいぐるみの山に、マスコミからはまたどよめきの声が上がった。
数分前まではいなかったはずのレポーターもいつの間にか集まってきたようで、ほうぼうから実況の声も聞こえ始める。
こんな情けない姿を世に晒す羽目になるなんてと歯軋りしていると、雅がやたらと距離を詰めて立ちはだかった。
「なんだよ。まだなんか文句あるのか。それとも俺を警察にでも引き渡そうって……」
睨み上げる光煌から何故か目を逸らしたまま、雅は光煌の肩に上着を羽織らせる。
一体どこから出したのかはわからないが、光煌よりも一回り以上大きな、男物のジャケットだ。
まだ成長途中の光煌の体を、すっぽりと包む。
「……なにこれ?」
訝る光煌に、雅はやはり明後日の方向に視線を向けたまま、こほんと咳払いをした。
「いや、あのな……、服が」
服、と鸚鵡返しに言って、己の体を見やる。
「服がなに……うわぁっ!」
カウンターを喰らった腹部に丸く穴が開いているのはともかくとして、胸元や尻、ブーツなどが引き裂かれたように大ダメージを受けている。服というよりも、もはやぼろきれが引っかかっているという有様だった。
明らかに作為的に破られたような状態で、見ようによっては殆ど裸だ。全裸にされるよりもある意味恥ずかしい恰好に、光煌はかけてもらったジャケットの前を掻き合わせた。
「なにこれ……なんだよこれ!?」
「……すまん、ほんとに」
「顔を赤らめるなー!」
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