裏を返せば…!
書籍紹介
塾の事務員である南雲は、鬼軍曹と渾名される数学講師の本郷が苦手だ。本郷は授業中以外は優しいのだが、南雲にだけはいつもあたりが強いのだ。けれど男に殴られていた本郷を助けたところ、彼に自分はゲイで南雲のことが好きだと、驚くべき告白をされた。おまけにMでつれなくされるのが嬉しかったらしい。てっきりドSだと思っていた彼に「しつけてください」と言われても……!?
立ち読み
「本郷ちゃん、跪いて足をお舐めなさい」
「は……っ?」
突然なにを言い出すのかと呆気にとられていると、本郷は一瞬きょとんとした顔をしたあと、唇にうっすらと笑みを乗せた。
そうして店の床に膝をつき、土下座をするような形で、何故か命令したカオルにではなく南雲の靴に唇を寄せる。
「ひ……!」
丁寧に扱ってはいるが汚い靴に、綺麗な顔をした男がキスをするという絵面は南雲をひどく混乱させた。
這い蹲りながら、本郷は南雲の足首に触れる。
「や」
ぞわりと背筋が粟立って、息が詰まる。
妙な声が出そうになって、南雲は己の口を手でふさいだ。
奉仕する本郷を見て背徳的な喜びに浸った、ということでは一切ない。
とにかく、なんだかとてつもなくいけないことをしているから、直ちに止めないといけないという使命感にかられた。
お天道様に罰を当てられる。そんな漠然とした恐怖に似ていた。
「や、やめっ」
上ずった声を上げて、南雲が足を振り上げると、本郷はそれを利用して器用に靴を脱がせた。
「え、わ……!」
上体を起こし、反射的に下ろした足を本郷が掴む。
バランスを崩してカウンターに縋っていると、今度は靴下の上から爪先を噛まれた。
「……っ!」
喉から声にならない悲鳴が漏れる。
親指から順に足指を甘噛みされると、体のあちこちがむずむずしだした。
そんな場所を口に含まれたことなど、勿論ない。
──き、汚いって……! なんで平気なのこの人、変!
さながら恥部を見られ、暴かれているような気分だった。
やめて、という言葉が情けないほど弱々しく上ずる。
付け根から関節、爪を確かめるように歯を立てられると、背筋がぞくぞくと震えた。なんだかそれが不快感ばかりでもないようで、ますます当惑する。
「や、うわ、わ」
綺麗な顔の男に足を噛まれる、という行為があまりに非現実的で、ぐるぐると目を回しそうになっていると、本郷は口を遣って靴下を脱がせてきた。
「ひっ……」
靴下を踝まで下ろされたところで、慌てて振り払う。
それ以上脱がされるのは阻止したが、踵を掴まれて引っ張られた。強引な彼の所作にびくりとして、南雲は椅子の上で固まる。
己に向けられた彼の瞳が、どこか恍惚とした様子で、息を飲んだ。
見てはいけないものを見ているような気がする。それなのに、抗うことができなくなって、南雲はただ彼を見下ろした。
抵抗をやめた南雲の足を撫で、彼の薬指が、踝の上の薄い皮膚を撫でる。
剥きだしになった足首に、ぬるりと熱い舌が這った。
「は……っ?」
突然なにを言い出すのかと呆気にとられていると、本郷は一瞬きょとんとした顔をしたあと、唇にうっすらと笑みを乗せた。
そうして店の床に膝をつき、土下座をするような形で、何故か命令したカオルにではなく南雲の靴に唇を寄せる。
「ひ……!」
丁寧に扱ってはいるが汚い靴に、綺麗な顔をした男がキスをするという絵面は南雲をひどく混乱させた。
這い蹲りながら、本郷は南雲の足首に触れる。
「や」
ぞわりと背筋が粟立って、息が詰まる。
妙な声が出そうになって、南雲は己の口を手でふさいだ。
奉仕する本郷を見て背徳的な喜びに浸った、ということでは一切ない。
とにかく、なんだかとてつもなくいけないことをしているから、直ちに止めないといけないという使命感にかられた。
お天道様に罰を当てられる。そんな漠然とした恐怖に似ていた。
「や、やめっ」
上ずった声を上げて、南雲が足を振り上げると、本郷はそれを利用して器用に靴を脱がせた。
「え、わ……!」
上体を起こし、反射的に下ろした足を本郷が掴む。
バランスを崩してカウンターに縋っていると、今度は靴下の上から爪先を噛まれた。
「……っ!」
喉から声にならない悲鳴が漏れる。
親指から順に足指を甘噛みされると、体のあちこちがむずむずしだした。
そんな場所を口に含まれたことなど、勿論ない。
──き、汚いって……! なんで平気なのこの人、変!
さながら恥部を見られ、暴かれているような気分だった。
やめて、という言葉が情けないほど弱々しく上ずる。
付け根から関節、爪を確かめるように歯を立てられると、背筋がぞくぞくと震えた。なんだかそれが不快感ばかりでもないようで、ますます当惑する。
「や、うわ、わ」
綺麗な顔の男に足を噛まれる、という行為があまりに非現実的で、ぐるぐると目を回しそうになっていると、本郷は口を遣って靴下を脱がせてきた。
「ひっ……」
靴下を踝まで下ろされたところで、慌てて振り払う。
それ以上脱がされるのは阻止したが、踵を掴まれて引っ張られた。強引な彼の所作にびくりとして、南雲は椅子の上で固まる。
己に向けられた彼の瞳が、どこか恍惚とした様子で、息を飲んだ。
見てはいけないものを見ているような気がする。それなのに、抗うことができなくなって、南雲はただ彼を見下ろした。
抵抗をやめた南雲の足を撫で、彼の薬指が、踝の上の薄い皮膚を撫でる。
剥きだしになった足首に、ぬるりと熱い舌が這った。
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