お花屋さんに救急箱
書籍紹介
俺は、お前が……すこぶる好ましい……ッ
生花店店主の九条と、「お試し中」の恋人関係となった医師の甫。自他共に厳しく生きてきた甫は、九条に癒され愛され尽くされて、甘やかされる心地よさを教えられた。少しずつ心を近づけていくふたりだったが、九条のかつての片思いの相手が現れたことで、すれ違いが生じ始める。生真面目な甫は思い悩んだあげくに…。甫の弟・遥の恋模様を描く『意地っ張りのベイカー』も収録!
立ち読み
「……お前は、俺の羞恥心の限界突破でも狙っているのか?」
恨めしそうな甫の非難にも、九条の幸せ顔は少しも揺るがない。
「あなたの羞恥心の天井が、低すぎるんですよ。……さあ、お返事は?」
猫が喉を鳴らすような声で催促され、甫はやけっぱちの勢いで、九条のパジャマの襟を引っ掴んだ。そのままグイと引き寄せ、勢いのままに唇を重ねる。
もう、何度となくキスは交わしてきた。だが、これは特別な想いを込めた、契約のキスだ。二人は互いの意志の強さを確かめるように、深く舌を絡め、互いの身体を強く抱き締め合った。
最初こそ甫が仕掛けたものの、すぐに主導権は九条に奪われ、その器用な舌に、これまで知らなかったゾクッと来るポイントを探られる。
前歯の裏側、歯茎との境目辺り……そんな部分をくすぐられると、遥か下方の腰に向かって電流が走るなどということを、九条と付き合うまで、甫は夢にも考えなかった。
そう言うと、九条は「お医者様でも、人体にご存じないことはあるんですねえ」と笑ったものだ。
「ふっ……ん、んんっ」
そんなことを思い出しながら、甫は息苦しさに耐え、九条のキスに必死で応える。苦しげにしている甫の顔が紅潮し始める頃、九条はようやく唇を僅かに離した。
空気を求めて喘ぐ甫の濡れた唇を親指の腹で拭い、九条はみずからも軽く息を乱しながら、僅かに掠れた声で言った。
「あなたのお気持ち、確かに頂きました。ですから、僕の気持ちも存分に受け取ってください」
恨めしそうな甫の非難にも、九条の幸せ顔は少しも揺るがない。
「あなたの羞恥心の天井が、低すぎるんですよ。……さあ、お返事は?」
猫が喉を鳴らすような声で催促され、甫はやけっぱちの勢いで、九条のパジャマの襟を引っ掴んだ。そのままグイと引き寄せ、勢いのままに唇を重ねる。
もう、何度となくキスは交わしてきた。だが、これは特別な想いを込めた、契約のキスだ。二人は互いの意志の強さを確かめるように、深く舌を絡め、互いの身体を強く抱き締め合った。
最初こそ甫が仕掛けたものの、すぐに主導権は九条に奪われ、その器用な舌に、これまで知らなかったゾクッと来るポイントを探られる。
前歯の裏側、歯茎との境目辺り……そんな部分をくすぐられると、遥か下方の腰に向かって電流が走るなどということを、九条と付き合うまで、甫は夢にも考えなかった。
そう言うと、九条は「お医者様でも、人体にご存じないことはあるんですねえ」と笑ったものだ。
「ふっ……ん、んんっ」
そんなことを思い出しながら、甫は息苦しさに耐え、九条のキスに必死で応える。苦しげにしている甫の顔が紅潮し始める頃、九条はようやく唇を僅かに離した。
空気を求めて喘ぐ甫の濡れた唇を親指の腹で拭い、九条はみずからも軽く息を乱しながら、僅かに掠れた声で言った。
「あなたのお気持ち、確かに頂きました。ですから、僕の気持ちも存分に受け取ってください」
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