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プランタン出版 TOP>秘恋は陵辱の褥で
魔都上海で刺客・月に、指令が下る。当然、男を煽る美貌と躰を駆使して懐に入り、暗殺する…はずだった。財閥総帥・上総は、月を刺客と知りつつ、館へと引き入れた。その剛胆さに戸惑うも、中国人と日本人の血の流れる自分と同様に、国の間で揺れ動く苦悩を、彼に感じ取る。急に愛惜を覚え、一介の男娼としてでも侍りたいと願うが、肌を合わせて体熱を感じ、雄芯を喰い締めた時、切ない彼への恋を自覚した。もう殺せない。だが上総には日本軍からも、危険な男が接近していて…!?
ロマンチック★★★★★ すれ違い★★★★
| 発行年月 | 2007年09月発売 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 定価 |
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関連リンク
靫上総 [攻め]
上海の日本軍を支援する若き財閥総帥。月を泥海の中から、救い出す。裕福だが冷めた家庭で育ち、言いしれぬ無常感を抱えている。
月 [受け]
凄腕の暗殺者。自分にその血が流れているが故、日本人には複雑な思いを抱えている。上総を殺そうとするも、彼の心の空洞を知り…。
喘ぐように洩らした吐息を熱いものに奪われ、それが靫の唇だと気づいて、白いシャツに包まれた広い胸を反射的に叩き、抗っていた。
「はっ、んっ、ん……だめっ……」
だめだと叫んだ声を呑み込まれ、欲しくて堪らない熱を与えられれば、抵抗する気力など呆気なく萎えた。
夢見心地に含まされたなめらかに動く舌を吸い、まさぐるそれを口腔の奥まで誘い込む。滲んでくる唾液は阿片の夢よりもずっと甘く、月を媚薬のように酔わせた。
「かず、さ……っ」
「死ぬな、月。生きろ……」
あの声が聞こえた。黄浦江に流され、死にかけていた自分を呼び戻してくれた、温かくて、力強い響きを、頬に触れた靫の唇から確かに聞き取った。
「互いに憎しみ合うしかないとしても、俺は、おまえを失いたくない。生きていてくれ。それだけでいい……」
月の父親と日本人への憎しみも、靫の父を殺した中国人への恨みも、生きている限り消えることはない。それでも、月を失いたくないと訴える男の真実を、信じることはできた。
月が生きている限り、誰かを裏切り、また命を奪い続けるだろう。藍衣社の刺客として生きてきた月に、この国にも日本にも安息の地はない。
生きていくことは苦しかった。靫への思慕を自覚した時から、彼の手でそれを終わらせてくれることだけを願っていた。
靫には、多分、月の望みもわかっているはずだ。残酷だと、すがりついた男の背中に爪を立てた。
温もりとやさしさを自分に教えて、憎しみよりもずっと欲しかったものを思い出させておいて、靫は何ひとつ月にくれない。
愛してほしいなどと求めはしないから、せめてその手で殺してほしかった。最後に靫に送ってもらえるなら、何も得られなくていい。
「……ひど、い」
「ああ」
男の耳元へ、深い絶望を絞り出すように囁いた月に、靫は静かにうなずく。月が、彼の言葉には逆らえないことさえ、靫にはわかっていたのだろう。
「俺を、恨んでも、憎んでもいい……」
自分への憎悪を糧にして生きろと促す靫に、月は違うともどかしく首を左右に振った。憎しみなどほしくない。何も満たすことのない憎悪を抱えて生きるのはもう嫌だった。
「……してる、から」
靫を愛しているから、自分に温もりを与えてくれたたった一人の男だから、世界中を裏切っても彼だけは裏切れない。
短い告白は、声になることはなく月の口の中に消え入った。愛していると、靫に伝えることはできなかった。