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書籍紹介

そのオニは、彼の許容を喰らって生きている。

幼馴染みの槇人と五夏は、普通の学生として学校に通いながらも、術者として仕事を受けている。
五夏は穢れを祓い、カミを降ろす。
だが槇人は、カミをその身の裡から顕現させる。
槇人はオニとも称されるカミ憑きなのだ。
そして、そんな彼と並び立ち、鎮められるのは五夏だけ。
「喰らい尽くして、誰にも渡したくない」と飢えに衝き動かされ、首筋に歯を立てる槇人を宥めて──。
 
立ち読み
 ふっと小さく息を吐いて前に出た槇人は、五夏と肩を並べると眼前に伸び上がってきた塊を掴んだ。
 一瞬の停滞の後、黒い影は霧散する。
 喉で悲鳴を呑んだ若い術師は、畏怖の目で二人を見遣る。
 彼が二人に対して恐怖を覚えるか、憧憬を抱くかはもうどうでも良い。敵愾心を持つ事だけはなさそうだが。
 五夏は加減して、ケガレをひとつ捕まえる。
「ほら」
 目で示された術師は我に返り、閉じた扇で影を薙いだ。
 扇からふっと花が香って、ケガレを祓ってゆく。
 五夏達が見せたそれの様に圧倒的ではないものの、無力ではない事を示すには足る。
 残っていたケガレをそんなふうにして三つ祓い終えると、青年はくたくたと石畳に座り込んだ。
 緊張から解放された安堵と、能力を使った事による疲弊とが、綯い交ぜになって彼を襲っている事だろう。
 後見は青年の肱を取って立ち上がらせる。
「世話を掛けた」
「いえ」
 本音は、早く帰りたかっただけだというのは、隠し様もない訳だが。
 物理的な対策をしていない状態で、時間を掛けるのはまずいという実際もある。幾ら話が通っていても、占有するのは三十分が限界だ。
「お送りします」
 軽く挨拶をして別れた二人は、後衛の運転手に公園の外を示された。
「お願いします」
 その前に、喉が渇いたからと、五夏は脇にあった自動販売機で麦茶のペットボトルを買う。
 喉を鳴らして半分ほど飲んで、槇人に渡すと、一口二口含んで戻してきた。
「ちょうだい」
 その目にちりっとした熱が宿っているのを見て取り、顰め面をした五夏は、仕方がない、といった体でちいさなカマイタチを起こして指先を切る。
「ほら」
 五夏の手をとって口許に運んだ槇人は、血の浮いた指先を舐めてから、口に含んだ。
 吸われる感触に、五夏は眉間に皺を寄せた。
 そうした光景を初めて見る者は、驚きに動きを止めたり、二度見したりしている。
 そして、上位者に注意を促されて慌てて仕事に戻るが、ちらちらと目を向けていた。
 血を吸うなど、ケガレを口に含むのと同等の感覚の筈なのだが、強い術者の血にはそれだけで力がある事も彼等は教えられている。
 ───最高の術者とされる少年の血は、どういうものなのか。
 それを当然の様に求めて許される少年の特異性についても、聞かされているけれど。
 念を押されるのは、彼等の邪魔をしない事だ。怒らせるな、と。
「これじゃあ、余計に餓えるだけだけど?」
「だから、期末試験!」
 ちろりと舌で唇を舐めた槇人の目の中の餓えに気付かないふりで、五夏は先延ばしに保身を図る。
(イツカはおいしい)
 槇人は物心ついた頃にはそう言い始めていた。
 それがどういう事なのか理解する以前に、五夏は完全に槇人に喰われていた。
 槇人は飽く事なく、五夏を喰らい続けている。
 俺はお前のものだと囁きながら。
 している事は逆じゃないか? と五夏は思うのだが、槇人の論理としてはそうらしい。
 五夏にとって、槇人は友人とか幼馴染みといったカテゴリーには入っておらず、既に“身内”になってしまっている。
 普通の高校生でいたいと思っても、否応なしに不可思議な事件に借り出されてしまう彼等にとって、代わりのいない相棒だ。
 長男は「俺の目の黒いうちは…」とやる前に、既に五夏は槇人に喰われていた訳だ。
 あまりにも五夏が変わらないので、気が付かなかったという理由もある。
 変わるも何も、幼い頃からの延長線上という感覚でいるからだ。どうもまずいな、と思ったところで、積極的に拒否するには狎れすぎてしまっていた。
 食べたい。
 その言葉の持つ、三重の意味。
 十六才には、少し荷が勝る。
 
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