甫
2019/08/23
来月の九条の誕生日には、俺自身と俺自身の一日分の時間がプレゼントとなるらしい。
それがいちばんほしいものだと言われたら、同意しないわけにはいかなかったが、本当にそれだけでいいのだろうか。
祝うべき立場の俺が完全に受け身なのがどうにも申し訳ない。
せめて、何か小さなプレゼントを別に用意しようと思う。
とはいえ、何がいいのか……。
職場で昼休み、弁当を食べながら考え込んでいたら、深谷に心配されてしまった。
他に誰もいなかったので、正直に悩みを打ち明けたところ、「九条さんは髪が長くて綺麗だから、何か髪の手入れをするためのものとかどうですかね」と、思ってもみないアドバイスをもらった。
なるほど。なるほど……だが、具体的には、と問うと、「や、僕はこれなんで」と短い髪を撫でてみせた。それはそうだな。
ふむ……髪の手入れ……髪の長い女性陣に訊ねてみるとしようか。