甫
2017/03/28
帰宅したら、九条があからさまに嬉しそうにしている。
何かあったのかと訊ねたら、地元の大きなホテルのロビーに据える大きなフラワーアレンジを、向こう一年、任されたらしい。
なんでもホテルの支配人が、九条がブライダルフラワーを手がけた花嫁の親戚で、披露宴で見た花がいたく気に入って、仕事を持ちかけてくれたのだそうだ。
思いがけないところで、縁は繋がるものだ。
「緊張します」と言いながらも晴れやかな九条の顔を見ていると、俺も心から嬉しくなった。
同時に、九条が生けた花をたくさんの人が見るのだと思った途端、俺まで若干緊張してきた気がする……。